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きっと僕は堕ちていく  作者: 颯優夜
5/10

其の四

 月が綺麗だった。

どうしても眠れなかった。こんな気持ちは初めてだった。優希子は優しすぎる。それは優希子の良いところだと思う。どんな生活をしていたらどんな親だったらあんなに優しい子ができるのだろう。

その晩はとても落ち着かなかった。


「おはようござい、ってどうしたんですか?隈が…」

「ああ、気にしなくていいよ。」


 結局一睡もできず朝を迎えた。優希子は僕を心配して慌てふためいている。そんな姿に少し愛らしさを覚えた。


「それでは、私は仕事に行ってきます。」

「そっか、僕は今日は仕事無いから。」

「そうなんですね。それでは夕刻には戻ります。それでは行ってきます。」

「うん、行ってらっしゃい。」


 僕は優希子を送り出した。

優希子の事を知りたいって気持ちは変わらない。だから決めた。


優希子の後をついていこう。


優希子がそれに気づかなければ、僕が知らないフリをしていれば、それは君に聞いたことにはならないよね。そうと決まればと僕は優希子の後を気づかれないように追った。


 しばらくすると優希子は店に入っていった。そこはとても立派な呉服屋だった。どうやら優希子はここで働いているらしい。


「おはよう、優希子ちゃん」

「おはようございます、藤堂(とうどう)さん。今日もお元気そうでよかったです。」

「はっはっは、そりゃあ優希子ちゃんがしっかり働いてくれるからね。」

「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。」


 店主らしき爺さんと優希子が話している。この呉服屋はこの辺では有名な店だ。下の下の生活をしている僕でも知ってるほどの。昨日貰った着物はとても着心地が良かった。粗方この店の失敗作を僕のために貰ってくれたのだろう。


「おい、親父!話してばっかじゃなくて仕事しろよ!」

菊之助(きくのすけ)!父に向かってその口の利き方は何だ!」

「お、お二人共、喧嘩はやめて下さい!私が早めに会話を打ち切るべきでした…すみません。」

「いや、優希子ちゃんが悪いわけじゃ…とりあえず仕事するよ。」

「はい!」


 その後も優希子が働いているのを観察していたが、昼には帰り、市場に寄った。市場には様々な商品が売られている。


 僕はある店の前で止まった。そこには色とりどりの簪や櫛、髪飾りが売られていた。僕はそこにあった髪紐に目が止まった。


 綺麗な藤色の花のような形の宝石と優希子の瞳と同じ空色の綺麗な雫のような形の宝石の装飾が施された若葉色の髪紐だった。

 即座に僕は髪紐を購入した。そして僕は優希子の家へと帰った。


「…はあ、優希子…早く帰ってこないかな…」


 僕は優希子の帰りを待ちながら静かに眠りに着いた。


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