9.魔法の基礎
「これで、アマダスさんもパランさんと同じ冒険者です。今後の活躍を期待していますよ。もちろん、パランさんもです」
私に近付けていた顔を離して、ナールはにっこりと笑みを浮かべると、私とアマダス両方を見ながらいつもの明るい声に戻って言う。
それに私は少し口ごもりながらも視線を逸らして、小さく返事をする。
「は、はい……」
一方、何も知らない、後ろにいる冒険者カードを持って嬉しそうにしているアマダスは、ナールの言葉に大きな返事をする。
「分かったぞ!」
ナールはそんなアマダスを微笑ましい目で見て、同じ笑みを浮かべたまま、いつものように綺麗な礼をして、ぺこりと言う。
「いつでもお待ちしております」
この最後の言葉を聞いて、私は体の向きを変えて受付の前から歩き出す。いつもより少しだけ速く足を動かして。
足音で、ちゃんとアマダスは付いて来てくれていると分かるので、そのまま止まらずに冒険者協会の建物の外に出る。
それから少し歩いて立ち止まり、息を吐きながら肩を落とし、体から恐怖を追い出すように、口を開く。
「はぁー、怖かった」
ナールがあんなに怖いとは……安心したからか少し疲れが体を襲ってくる。
「アマダス。とりあえず、王国の外に行こう。そこで一番簡単な魔法を教えてあげる」
「本当か?でも……パラン、大丈夫か?」
表情を見てからか、アマダスは少し心配したように、声をかけてくれる。本当に優しい子。
でも問題ない。時々ある事だから。なんなら今日はまだマシな方。知らない人と、どうしてもって事で喋った時の方がまだ疲れる。
だから、全然大丈夫……
〇◆〇◆
王国の外へとやって来た。リーン王国は別に森や林の中に王国がある訳では無いので、結構外に出ると見渡しはいい。
「すごいな。建物も人も何も無い。めちゃくちゃ広くて、綺麗じゃな」
アマダスが興奮しながら、辺りをぐるぐると見渡す。
まあ、確かに今が一番いいと思う。綺麗な青空に暖かい陽気……これからはもっと暑くなるから、だから今が一番。
絶えず笑みを浮かべているアマダスを、無意識に少しだけ眺めて……
「アマダス。魔法を教えてあげる」
「やったぞ。教えてくれ、パラン」
アマダスの返事に頷いて、パランは自分の手のひらを合わせると、
「魔法を使うにはまず、魔力を認識しないといけない。だからこの魔法は、魔法を使うための魔法だよ。手に力を込めて……それから、見えない力を纏うイメージをするんだ」
そうパランが言った途端、パランの髪が、服が、ヒラヒラと動き初めて、ぼんやりとした赤い光が見えるようになる。
それを見てアマダスは、
「おおっ!これが魔法か、すごいな!我もするぞ!」
無邪気にまるで、子が母を真似るようにパランの真似をし始める。それを見て私は少し、アマダスに言う。
「出来るまで手伝ってあげるから、だから焦らなくても……」
けれど私は、その続きの言葉に詰まる。だって……アマダスは、私よりも強い魔力を身に纏ったから。
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