77.パランとミラーナ
ラトとアマダスが部屋を出て、扉がパタンと閉まり、部屋の中はミラーナさんと私の二人だけに。
それから少し静寂の間があり、ミラーナさんは優しく口を開く。
「パラン、二つ話しておきたい事があるの。どっちも、話の途中で聞きたくなくなったら、嫌って言っていいからね。いい?」
「は、はい」
私がぎこちなく頷くと、それを確認して、ミラーナさんは優しい声のままで最初の話を始める。
「一つ目は、アマダスの事について。まず、パラン。アマダスについて、知っている事を話してくれない?」
私はミラーナさんのそんな問いに、頭の中で軽く言葉をまとめてから答えを口にする。
「リーン王国で拾った、記憶がない、でも魔法はすごい得意な優しい子、です」
「そう。なら、アマダスという名は、パランが付けたの?」
「いえ、名前だけは覚えていたんです」
私の返した言葉にミラーナさんは少し考える様に、視線を私から外して、
「……パラン、覚悟して聞いて欲しい事があるの。いいかしら?」
「えっーと……はい」
パッとミラーナさんは真剣な眼差しになって、私にまた視線を送ってきた。
私は別に、言葉の続きに嫌な予感はしなくって、迷う事なく頷くと、続きをミラーナさんは言う。
「アマダスは、人間じゃないわ」
その言葉を聞いて私は、一瞬頭の中で理解出来ずに固まる。でも、頭は否定するんじゃなくて、少しずつ納得していくような、腑に落ちたようなそんな感じで言葉を飲み込んで、
「人間じゃないなら、なになんですか?」
私はミラーナさんに言葉を返すと、ミラーナさんは首を横に振って、
「分からない。ただ、人間ではないことだけは確かで、それを知って欲しかった。……嫌、だった?」
「いえ、人間じゃなくても、アマダスはアマダスで、何も変わりません。分かりました。覚えておきます」
私の言葉にどこか胸を撫で下ろした様に、ミラーナさんは安堵の表情を浮かべ、一回深呼吸をすると、
「二つ目、いいかしら?」
私の瞳を覗き込んで言ってきたので、私は頷き一言返す。
「はい」
それを聞いて、ミラーナさんは立ち上がると私の方まで近寄って、優しい声で聞いてくる。
「パラン。次はあなたのこと。生まれ育った国はどこ?」
私はその言葉に、体をビクッと震わせて目を見開きながら、思わず拳を握ってしまう。でも、ミラーナさんは穏やかに笑って、
「私はずっと、あなたとアマダスの味方だから」
私を優しく柔らかい体で抱きしめて、頭を撫でてくれる。
その優しさと暖かさが、ほんの少しだけ師匠に似ていて……私は涙を零しながらミラーナさんの胸に顔を埋めると、背中をゆっくりと撫でてくれ、私を落ち着かせてくれる。
「心の中の恐怖を、昔の嫌な記憶を、我慢しないで。私が包んであげるから」
「……はい」
静かな声に小さな小さな声で返事をすると、少しずつ心の中が落ち着いて鎮まり、再びミラーナさんは聞いてくる。
「パラン。あなたの生まれ育った国はどこ?」
その質問に私は、
「スマーラ……王国……です」
唇を震わせながら、ぎゅっとミラーナさんを抱きしめて、今はもう無い、二年前に滅びた王国の名を口にした。
ミラーナさんはその答えに、
「ずっと気になってたの。パランはまだ『邪紋』があるから。ねぇ、見せてくれない?」
そんな事を聞いてきて、私はミラーナさんのおかげか初めてその言葉にあまり嫌な気にならず、頷く。
そして、ミラーナさんから離れて、上の服を脱いで胸の下を見せる。
「……【最上級】……」
ミラーナさんは私の『邪紋』を見てなにか呟くと、ゆっくりと私の『邪紋』に触れて、
「消せなくて、ごめんね。でもこれで、誰からも見えないはず。見せたい時があったら、願えば出て来る。願えば、消えるから」
頭を下げて謝り、私に魔法をかけてくれた。そして、
「あなたとアマダスの事を沢山教えてくれて、ありがとう。何かあったら言って。必ずあなた達を助けるから。だから……約束の証にこれを」
ミラーナさんは、金色の綺麗な結晶のネックレスを取り出して私にくれ、とっても穏やかな顔で微笑んでくれた。
最近全然投稿出来てなくてごめんなさい。新しく百合の短編を書いたりしていて、今月もあまり投稿できないと思います。
ですが、三月からはそこそこの頻度で投稿出来るはずなので、気長にお待ちして頂ければ幸いです。
本当にごめんなさい。
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