76.アマダスとラト
パタン、と扉が閉まりラトと一緒に階段を降りていく。少しの間だけだとは思うが、パランと離れるのは寂しい。
ずっと一緒におりたいな……
「ふふぅ〜、パランさんの事ぉ〜、本当に大好きなんですねぇ〜」
「当たり前じゃ」
ラトは下を見ていたからか、相も変らぬ笑顔で話しかけてくる……いや、くれたのか。ラトは本当に、人を観察するのが上手い。
「パランさんが羨ましいですねぇ〜。こんなにも可愛い子にぃ〜、愛されまくってるんですからぁ〜」
「ラトだって、ミラーナがおるじゃろ?」
「それはそうですけどぉ〜、私も一回でいいのでぇ〜、自分よりも小さい人に愛されたいんですよぉ〜」
「そうか。応援しておるぞ」
「えぇ〜、冷たくないですかぁ〜?パランさんがいないとぉ〜、アマダスちゃんってこうなるんですかぁ〜?」
雑に言葉を返すと、少し傷付いた様にうなだれるラト。そんなに小さい人に愛されたいなら、誰か見つければ良いのに……
「はぁ、ラトなら見つかるじゃろ。たぶん」
「そ、そんな雑にぃ〜、人を励まさないでくださいよぉ〜。別に私はぁ〜、アマダスちゃんに一回好きって言われたらぁ〜、それでいいんですよぉ〜」
「そうか。頑張れ」
「ええぇ〜、話聞いてましたぁ〜?」
ラトと話しているうちに、階段を降りきって冒険者協会の一階へと着いた。朝から少し時間が経ったからか、ちらほらと冒険者がいる。
確か冒険者ランクを上げると言っていたので、受付に行けば良いのじゃろう。
「お、おはようございます」
唇を尖らせているラトと一緒に受付に行くと、ラトを見た受付の人が少し動揺しながらも、綺麗なお辞儀で挨拶をしてくれる。
それを不思議に思っていると、
「アマダスちゃん、冒険者カードを貸してくれませんかぁ〜?」
ラトに手を差し出されながら、そんな事を言われたので、
「ほれ」
「ありがとですぅ〜」
冒険者カードを収納魔法から直に渡すと、ラトはしっかりと受け取り受付に向き直って、
「話は聞いてますかぁ〜?」
「はい。アマダスさんの冒険者ランクを上げると。……問題ありませんね。少々お待ち下さい」
受付に冒険者カードを差し出して、それを確認した受付の人は奥へと消えて行った。
終始受付の人はどこか緊張していたが、どうしたのだろうか?そんな事を考えていると、
「アマダスちゃん。私のお話がいいなぁ〜、って思ったらぁ〜、好きって言ってくれませんかぁ~?」
ラトはどこか楽しそうに笑顔を浮かべながら、お願いしてくる。
そのお願いに、少しだけ返す言葉に迷いつつも、
「分かった」
一言頷くと、ラトはいつもの笑みから妖艶な笑みに変わって、聞いてくる。
「アマダスちゃんはぁ〜、キスって知っていますかぁ〜?」
「知らんな」
首を小さく横に振ると、ラトはぐいっと何故か顔を近付けてきて、自分で唇を指差すと、どこか自慢げに言ってくる。
「昨日お姉ちゃんにされたんですけどぉ〜、唇を好きな相手にぃ〜、くっ付ける事なんですぅ〜。パランさんに是非やってあげて下さいねぇ〜。大好きって事ですからぁ〜」
「そうか。分かったぞ。じゃが、唇をどこにくっ付ければ良いのじゃ?」
「それはもちろん、ここですよぉ〜」
「お待たせしました。どうぞ、お受け取り下さい」
ラトが言葉を言い終わると同時に、受付の人が冒険者カードを差し出してくれ受け取る。
それを見てラトは歩き始め、
「私の話ぃ〜、いいなぁ〜って思いましたかぁ〜?」
またいつものニコニコ笑顔に戻って聞いてきた。なので、あまり悩まずに言う。
「悪くはなかったな」
「ず、ずるいですよそれぇ〜」
キス、か。やれば、パランは喜んでくれるじゃろうか?すごく楽しみじゃな。
「なぁ、ラト」
また、ほんの少しだけ記憶が戻って来て、キスという言葉を懐かしく思う。だから、不意に笑ってしまいながらも、ラトの方を向いて、
「パランの次に、好きじゃぞ」
仕方がないので、優しく言ってあげた。
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