75.お揃い
チュンチュンという鳥の鳴き声が聞こえて目が覚める。
昨日魔物を倒した後リーン王国に戻りみつけた、初めて泊まった宿屋はどこか新鮮で、私は体を起こしながら辺りを見て、体に張り付いているアマダスを剥がす。
「パ、パラン……もっと……ぎゅって……叩いて……」
「どんな夢を見てるんだろう?」
アマダスの不思議な寝言に首を傾げながらも、なんとか引き離してベットから降りて立ち上がると、外を見る。
今日は冒険者協会に行く以外に用がないので、ゆっくり出来る一日のはず。
それからしばらくボッーとしていると、アマダスがゆっくりと起きて、
「おはよう、パラン」
どこか上機嫌に言われたので、
「うん、おはよ」
私も笑ってそう言うと、アマダスはベットから降り、私の前へ来ると、
「冒険者協会に行くんじゃろ?早く行って、朝ご飯を食べるぞ!」
手を差し出してそう言ってきたので、その手を優しく握り、
「行こっか」
二人仲良く宿屋を出た。
朝早いこともあってかあまり人がおらず、賑やかになる前の静かな道を歩いて行く。そして、見慣れた冒険者協会へとたどり着いた。
「おっ!中に誰もおらんぞ!」
「朝だからってのもあるけど、珍しいね」
アマダスと私は、冒険者が誰一人いない冒険者協会の中が物珍しくって、くるくると見ていると、
「パランさん〜、アマダスちゃん〜、待ってましたぁ〜!」
とっても明るいラトの声が奥から聞こえて、視線をそっちに移す。
「おはようございます」
「おはようじゃ!」
「おはようですぅ〜!お姉ちゃんが待ってるのでぇ〜、早く早くぅ〜!」
楽しそうなラトに急かされて、私達は階段を登り扉を開く。
すると中には美味しそうな朝食がたくさん置かれ、ミラーナさんが一人、柔らかい笑顔を浮かべて座っていた。
「待ってた。一緒にご飯を食べよう」
ラトに案内されてそれぞれ椅子に座り、美味しそうな朝食にアマダスがよだれを垂らしそうになる中、皆でいただきますと手を合わせて、食べ始める。
「好きなだけ食べていいですからねぇ~」
そんなラトの言葉にアマダスは勢い良く食べ始めて、私もご飯を頬張る。
「相変わらずの食べっぷりですねぇ〜」
「いいね、皆で食べるご飯は」
初めて四人なんて人数で話をしながらご飯を食べるけど、なんだかとっても美味しい。
そうして雑談をしながら私達四人は朝食を食べ、気が付けばテーブルの上にあったご飯が全てなくなった。
「皆、いっぱい食べたね。美味しかった?」
「はい、とっても!」
「お姉ちゃんの料理は世界一ですねぇ〜」
「ミラーナが作ったのか?美味かったぞ!」
「良かった」
どこか嬉しそうに笑って、ミラーナさんは魔法で食器を片付けると、今度は少し真面目な雰囲気になって口を開く。
「それで本題。冒険者ランクをね、アマダスだけ一つあげたいと思うの。それで良い?」
「おう!やったぞ!」
「ど、どうして私の方を?」
喜んでいるアマダスには何故か視線を向けずに、私に向けて言ってきたので首を傾げて返すと、
「パランの冒険者ランクも上げれるけど、そうしたら昇級試験を受けないといけなくなる。蒼、紫、黒に上げる時はアマダスみたいに無条件じゃ駄目だから。だから、今よりも強くなってからの方が私はいいと思うの。どうしてもってなら上げるけど、どうする?」
ミラーナさんのその問いかけに、私は少し考えてから、
「このままで、お願いします」
「分かった。ラト、お願い」
私の返事を聞いてミラーナさんは頷き、ラトに視線を送る。すると、
「はぁ~い。アマダスちゃん、私と一緒に下に行って冒険者カードを更新しましょう〜」
ラトは立ち上がり、にこにこしたままアマダスに言う。それにアマダスは首を傾げながら、
「パランと一緒じゃだめか?」
少し心配そうな声をあげたので、私はアマダスと一緒に行こうと、席を立ち上がろうとした時、
「ちょっとだけ、パランと二人っきりでお話したいの。アマダス、パランに何もしないと約束するわ」
ミラーナさんがアマダスを真っ直ぐに見て、頭を下げた。それを見て私が立つのを躊躇っていると、
「約束じゃからな?」
ミラーナさんを真っ向から見返して、アマダスは真剣に言葉を発し、それにミラーナさんが頷くと、アマダスはこっちにやってきて、
「何かあったら言うんじゃぞ?」
私の手を握ってくれ、優しい声で言われたので、
「うん、ありがとう」
お礼を言うと優しく笑って、ラトと一緒にアマダスは部屋を出ていった。
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