74.蒼色の魔法
「な、中に入って、どうするんですか?」
ミラーナさんの言葉に、私は困惑しながらそう返すと、何一つ表情を変えずに続きを言ってくる。
「ラトに言われた。右回りでしょ、この竜巻。中で私も同じ流れの炎を起こせば火力が上がるって」
「ラトさんが……でも中は……」
「ミラーナ、頼む!」
私の言葉を遮ったアマダスにすぐさま頷いて、ミラーナさんは竜巻の中に飛び込む。
「アマダス……」
「大丈夫じゃ、あやつは死なん。それに……」
「うわっ!」
「えへへぇ〜、パランちゃん、許して下さいねぇ〜」
後ろから急に抱きつかれ振り返ると、ラトがどこか上機嫌にヘラヘラしていた。
「ラトもここじゃ。心配ないじゃろ?」
「そ、それはそうだけど……」
私はアマダスの言葉に渋々頷いて、前を見る。と、ラトが私をぎゅっと抱きしめて、いやらしく手を握ってきたかと思えば、どこか色っぽく口を開いた。
「噂ですけどぉ〜、愛って魔力を底上げするらしいですよぉ〜。アマダスちゃん、パランちゃんを貰ってもいいですかぁ〜?」
「だめじゃ!急に何を言っておるんじゃ?」
「どうしてかぁ〜、理由を聞いてもぉ〜?」
「好きじゃから!大好きじゃからじゃ!」
「へぇ〜、ならパランちゃんはぁ~、アマダスちゃんのことどう思ってるんですかぁ〜?」
「えっ?いやそれは……」
おかしいなラトに私は言葉に詰まらせていると、竜巻の中心から蒼い炎が現れ爆発的に大きくなり、少しずつ竜巻と同じ様に回転し出す。
「ほらぁ〜、早く言わないとぉ〜、魔法を使う時間が来ちゃいますよぉ〜。アマダスちゃんにだけ愛の告白をさせるんですかぁ〜?」
「わ、分かりました。私もアマダスの事が好きです!」
「それだけですかぁ〜?アマダスちゃんはぁ〜、パランちゃんとこうやって仲良くしたいですよねぇ〜?出来ればぁ〜、裸で」
ラトがいきなり、私の首筋を舌で舐めるような仕草をしてきて……アマダスはそれを見て、
「やりたいぞ!」
迷う事なくそう言った。それを聞いて、ラトは面白そうに笑ってから、言ってくる。
「あと少しでぇ〜、魔法を全力で打ってくださいねぇ~。それでぇ〜、パランちゃんはぁ~?」
「そ、そんなの……」
私がまた言葉に詰まっていると、蒼い炎は速度を増して回り、竜巻が完全に蒼色になる。
「早くぅ〜!」
「そ、そんなの、出来れば……私もやりたい……よ」
本当に本当に小さな声で顔を真っ赤にしてそう言うと、ラトは笑い、アマダスも恥ずかしそうに笑った。
その瞬間、蒼い竜巻はいきなり元の竜巻に戻って……
「今です!」
ラトがそう叫んだので、私とアマダスはお互いに痛いぐらいしっかりと手を握りしめて、
「『『解放!!』』」
思いっ切り竜巻に魔力を込めて大きく強くしたのと同時に、中心から一気に蒼い炎が広がり勢い良く回り、さらに激しく、さらに強く竜巻が成長して、また出て来そうだった鴉諸共、蒼い竜巻が竜巻を飲み込み、辺り一帯は蒼い光で照らされて、物凄い轟音と共に竜巻が目の前を切り裂いて行く。
そして森をも飲み込みそうになった時、いきなり空が晴れて私とアマダスは力を抜く。
それと同時に竜巻が蒼い炎と一緒に霧散して、竜巻が地面を焦がした跡だけが残った。
「や……やった……」
「凄いですねぇ〜!本当に勝ちましたぁ〜!」
「パラン!やったな!」
太陽が明るく天と地を照らす中、私達はそう言って喜びながら地面へと座り込む。
「皆、お疲れ様」
そしてただ一人何事もないように、平然としているミラーナさんがこちらにやってきて、皆の頭を優しく撫でてくれた。
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