73.あなたに魔力を
こちらに向かってくる竜巻を見てミラーナさんは、素早くラトを抱きかかえる。
「一旦逃げる。亡骸は後でどうにか……」
「だめじゃ!この魔物を守らんと!」
ミラーナさんの言葉を何故かいきなり遮って、アマダスが珍しく少し怒ったような焦ったような顔で竜巻の前へと行くと、魔法で目の前の竜巻と同じぐらいの大きさの竜巻を起こしてぶつけ、これ以上こちらに来るのを防ぐ。
それにより辺りには物凄い風が吹き荒れて、竜巻の中には雷が落ち、風の音と雷の音が辺りに響き続ける。
そんな状況の中、ミラーナさんは抱いていたラトを私の方へと持ってきて、
「パラン、ラトをお願い」
そう言ってまた預けられた。でも今度は……
「す、すいません……もうクタクタでぇ〜」
抱き抱えないと倒れてしまうぐらいに魔力を使ったラトで、私はどうにか抱きしめてラトを安定させ、ラトも私にぎゅっと抱きつく。
そんな私とラトをよそに、ミラーナさんはアマダスの所へと行くと、問いかける。
「どうして、そこまでするの?」
「この魔物を持って行かれる気がするんじゃ……」
「持って行かれたら、だめなの?」
「だめじゃ!」
アマダスの言葉を聞いて、ミラーナさんは魔物の上へと飛び上がり、
「私、不器用だから収納魔法に大きな物を入れれないの。アマダス、その竜巻をどうにかするまで、私がこの魔物を守る」
「助かるぞ!」
「パラン、ラト。もう少しこっちに来て」
「はい……うぅ、重い」
「許して下さぁ〜い」
ミラーナさんに言われた場所へと、ラトと抱き合いながら向かい、アマダスが竜巻をどうにかするまで待つ。
でも五秒経っても、十秒経っても、竜巻は消えることなく、ぶつかり続ける。
「アマダスがあんなに苦戦してるの、始めて見た」
私が思わずぽつりと思ったことを口に出すと、私を抱きしめているラトが耳元で、言葉を返してくる。
「あの魔法はきっとぉ〜、常に大きくなっているんだと思いますぅ〜」
常に大きく……成長してるってこと?でもそれぐらい……
「アマダスちゃんが大きくするのに合わせてぇ〜、相手も大きくなってるんですよぉ〜。つまりぃ〜、アマダスちゃんと同じぐらい強い相手がぁ〜、どこかにいるんですよぉ〜」
ラトはそう言うと、私を何故か更に抱きしめてきて、耳元でぽしゃりと言葉を発してきた。
「何かあったらぁ〜、私を捨てて逃げて下さいねぇ~」
「そ、そんな事しませんよ!」
「わぁ〜、嬉しいですぅ〜!」
「ラト、パラン、動かないで!」
どこか嬉しそうにラトが言葉を返すのと同時に、ミラーナさんのしっかりとした凛とする声が聞えてきた。
それに私は、どうしたんだろうと辺りを見渡してみると、竜巻の中から無数の鴉がこちらに向かって飛んできていて……
「『蒼炎神剣』」
ミラーナさんはレイピアをしっかりと構えると同時に、そう魔法を唱えて、レイピアが綺麗な蒼色の炎に包まれたかと思うと、レイピアを一瞬で振り抜き、無数にいた鴉達を一瞬にして灰にしてみせた。
でも……また少し経つと竜巻の中から鴉が出てきて、ミラーナさんは再びレイピアを構えて、また鴉を一瞬で灰にしそれが続く。
どうしよう、このままだとずっとジリ貧だ……何か良い手は……
「パランさん〜、魔力を少し分けてくれませんかぁ〜?」
私がどうするべきかと考えているとラトがそう言ってきて、私はすぐに頷く。すると、ほんの少しだけラトは魔力を吸い、ラトは自分の足で立ち上がると同時に収納魔法から自分のレイピアを取り出し……
「ラ、ラトさん!」
またよろけて倒れそうになる。けれど……
「このレイピアをお姉ちゃんに……パランさんは、アマダスちゃんを手伝ってあげて下さい。私はここにいますから」
「で、でも……」
「行って!」
ラトの初めて聞いた優しさのない真剣な声に、私はレイピアを掴んで、ミラーナさんへと向けて投げる。
「ミラーナさん!」
「ありがと」
しっかりとキャッチしたのを確認して、急いでアマダスの所へと行く。
「アマダス!」
「パラン?どうして……」
「私も手伝うよ」
困惑しながらも私の言葉に安心したように笑い、私は隣に並んでアマダスの手を握り、空いた片方の手を前に出す。
そうして二人同時に、
「『『解放』』」
ありったけの声で叫んで竜巻を激しく大きくする。でも相手の竜巻も負けじと大きくなって、
「またじゃ……押し切れん」
アマダスがイラついたようにそう言葉を零した。
でもきっとこれが、長引いている原因なんだろう。
一瞬で大きく強くして、押し切らないといけない。でも、どうしたら……
「パラン、アマダス。竜巻の中に入ってもいい?」
後ろからいきなり声がかかって振り向くと、蒼い炎を纏ったレイピアを二本持ち、鴉を蹴散らしたミラーナさんが笑顔を浮かべて立っていた。
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