70.金色の孤独
魔物の頭突きを喰らい、ラトが物凄い速度で吹き飛ぶ。そして、そのまま森へと吸い込まれるように消えていき、木々がなぎ倒される音が辺りに響いた。
「アマダス、行こう」
私とアマダスはそれを見て、ラトの所に急いで向かう。
「パラン、おったぞ」
そして、アマダスが素早く血まみれのラトを見つけて駆け寄った。
「大丈夫か?」
アマダスの言葉にラトは薄っすらと目を開けて、
「逃げて……下さい」
必死に口を動かしそれだけを口にする。けれど、アマダスはそれを無視してラトの頬に触れる。
すると、ラトの傷がみるみるうちに治っていき、ものの数秒で完治した。それはまるで黒い魔物が体を再生させる時のようで……
「立てるか?」
ラトは自分の体の傷が治った事に驚きながらも、アマダスの手を借りて立ち上がる。
「凄いですねぇ~……ありがとうございます」
「気にするな。それよりも、ミラーナが一人じゃぞ?」
しっかりと立ち上がれるようになったラトは、アマダスの言葉にハッとして、慌てて走り出す。
それに私もアマダスもなんとか付いて行き、森を抜けて再び開けた場所に戻ると、少し息が上がっているミラーナさんが、魔物から距離を取り、お互いに様子を伺って睨み合っていた。
「お姉ちゃん!」
「ラト、良かった。魔物の魔力はあと半分ぐらい」
ラトの焦った声に、ミラーナさんは優しく微笑みラトを片手で抱きしめる。
でも……
「あれだけやって、まだ半分しか……」
明らかにおかしい魔力量に、私がそんな言葉を漏らすと、
「我も戦うぞ」
「ありがとう、アマダス」
アマダスがミラーナさんを覗き込んで、そう言った。
ミラーナさんはラトの頭を優しく撫で終わると、アマダスにお礼を言い、しっかりとレイピアを握り込み、私の方を向く。
「パランはラトと一緒にいて」
「わ、分かりました」
私が頷くとラトを預けられ、私達は魔物から離れるように指示された。
「アマダス、行くよ」
「おう!」
一方アマダスは、収納魔法から剣を取り出し大きく頷いたかと思うと、ミラーナさんと一緒に魔物と戦い始める。
それから少し経ち、どこか落ち着いた隣にいるラトが私に手を差し出してきて……
「パランさん、やって欲しい事があるんですけどぉ〜、いいですかぁ〜?」
「えっと……何をすれば?」
「魔法を一緒に打ちましょう〜。手を握ってぇ〜、呪文を捉えるだけですぅ〜」
そうお願いされたので、ラトの言葉通り私はラトと手を繋ぎ、耳元でこしょこしょと呪文を聞いて……
「準備はいいですかぁ〜」
「は、はい」
私とラトは手のひらを魔物に向けて、呪文を唱える。
「「燃え盛る業火よ、万物を燃やし尽くせ」」
唱えていくに連れて魔法陣が展開され、魔力が赤く輝き、目の前に真っ赤な炎の塊が生成され……
「「『灼熱烈火』」」
私とラトは魔法を放つ。その瞬間、ミラーナさんとアマダスは魔物から離れ、赤い炎の玉は魔物にぶつかり、大爆発を起こした。
「すごい魔法を使ったな、パラン!」
「うん、上出来。それじゃ後は皆で、魔物を攻撃しよう。あとちょっとだから」
爆発から少し経って、ミラーナさんとアマダスが私達の所に来てそう言ってくれたので、各々構えを取って、煙の中から出て来るであろう魔物を待っていると……
「後ろじゃ!」
煙の中からではなく、何故か後ろからいきなり現れ突っ込んで来た魔物に私だけ回避が間に合わず……どうすることも出来ないまま時間の流れが遅くなった世界で、ただ呆然とこちらに魔物が来るの眺める。
そんな中で金色の瞳と初めて目が合う。魔物の王……その瞳の奥はどこか悲しそうで……
「……ごめんね」
私自身誰に言ったのかは分からないけど、そんな言葉が口から溢れて……次の瞬間時間は元に戻り、私は誰かにドカッと横に押されて勢い良く転がったかと思うと、魔物が私の横ギリギリを通り過ぎ……黒いワンピースを来た少女が、代わりに空中へと弾け飛んだ。
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