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69. 王

 最近魔物が増えてきている、魔物が強くなってきている、なんて噂が冒険者の間で流れるようになった。


 けれど、その噂はすぐに別の噂へと変わってしまう。


 魔物の王がいる。そんな噂に。


 それを耳にした私は、試しにラトを呼んで調べてみた。


「これはぁ〜……」


「共食い、だね」


 結果本当に魔物の王はいた。ブラックウルフに似たけれど違う魔物。その魔物は魔物を食らい、大きく強く成長していた。


 そして今日、その魔物を仕留めるつもりで私達は戦いを始めた。


 ◆


 煙の中から金色の瞳が光を放ち、こちらをじっと睨んでいる。


 厳かというか、畏怖さえ覚えるほどのその魔物はゆっくりとこちらに近付いてきて……いきなり地を蹴って突っ込んでくる。


 それをギリギリで回避して、開けた場所へと着地する。


「前は私が。ラト、逃げてって言ったら逃げてね」


「分かりましたぁ〜」


 ミラーナさんは収納魔法からレイピアを取り出すと、構えを取って黒い魔物と対峙する。


「パランさん、アマダスちゃん、私達は援護にまわりましょう〜」


 ラトのその言葉に私とアマダスは頷いて、黒い魔物から距離を取る。


 それからすぐ、黒い魔物がまたミラーナさんを狙って走り出した時、


「『解放(バースト)』」


 ミラーナさんは一気に黒い魔物まで距離を詰めて肉薄すると、右の前足を跳ね飛ばす。


 そして、勢いそのままに黒い魔物の下へと潜り込むと、胴体に深い斬撃を数撃入れて走り抜けた。


 黒い魔物は足が一本なくなったために、バランスを崩して倒れそうになり、胴体からは沢山の血しぶきが飛び散る。


 でも……足が一瞬のうちに再生してしっかりと立つと同時に、胴体の傷も一気に完治し、まるで何事も無かったかのように振り返ると、ミラーナさんを再度襲う。


 走るのではなく今度は飛び上がって上を取り、そのまま空中で体制を変え、口を開けミラーナさんを食べようと牙を剥く。


 それを冷静に見て、無駄のない動きで飛び上がったミラーナさんは、空中で体をひねり黒い魔物の攻撃を綺麗に避け、すれ違いざまに無数の斬撃を胴体と足に細く叩き込み、黒い魔物から距離を取り着地する。


 黒い魔物は着地した瞬間、ブシャと血が体から溢れ出す。なのに、その血が地面につく頃には傷は全て再生し、ミラーナさんを睨んだ瞬間、突如として黒っぽい緑色の魔法陣を展開し、空中に竜巻を起こしだした。


 それを見てラトは、収納魔法からミラーナさんの物とよく似たレイピアを取り出し、


「これはぁ〜、作戦変更ですぅ〜。あの魔物の魔力が尽きるまでぇ〜、粘りましょう〜。お二人はぁ〜、好きなタイミングで魔物に攻撃してくださいねぇ〜」


 それだけ言ってミラーナさんの所まで一瞬で行くと、間髪入れずにミラーナさんと一緒に魔物を息ぴったりに攻撃し始める。


「パラン、我も行くか?」


「えっーと、魔物はあの二人に任せて、私達は竜巻をどうにかしよう」


「分かったぞ!」


 私はあの二人の中に入っても足手まといにしかならないと思い、アマダスと一緒に竜巻を消すために動くことに。


 でもまあ、私の言葉を聞いてすぐアマダスは当然のように緑色の魔法陣を展開して、竜巻に竜巻をぶつけ相殺し、すぐに竜巻は姿を消したので、私とアマダスはやることがなくなり、二人を見守る事に。


「あの二人、すごいね」


「おう!本当に凄いぞ!じゃが……あの魔物の方が凄いぞ」


 アマダスがどこかなんとも言えない表情になり、言葉に迷うような間をおいたあと、静かに少し暗いトーンでそう言った。


 でもそれはたぶん、決して嫌味とか皮肉とかではなくて……適当で妥当な唯一の言葉なんだろう。


 だってミラーナさんとラトの猛攻に一方的にやられていた黒い魔物はいきなり、攻撃を全て見透かしたように素早く全ての攻撃を避け、


「ラト!」


 ラトに重い頭突きの一撃を与え、形勢が傾き出したのだから。

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