68.金色の瞳
「パランさん、アマダスちゃん。私とぉ~、私のお姉ちゃんと一緒にぃ〜、魔物のボス、もといい王を倒しに行きませんかぁ〜?」
「魔物の王?」
私が首を傾げて問うと、ラトに変わってミラーナさんが説明してくれる。
「そう、王。新種の魔物で名前はない。けど、すごく強い。四足歩行で、真っ黒で、目が金色。大きい体なのに素早くて、魔法まで使ってくる。だから、すぐに傷が治る」
ミラーナさんの説明を聞いて、私は少し考える。どれぐらいの強さかは分からないけれど、物凄く厄介そうで、足を引っ張らないだろうか……
ミラーナさんはきっと覇者だし、アマダスとラトもきっと強い。私がこの中で一番弱いだろうから、迷惑をかけないといいんだけど……
私は取り敢えず、自分に出来そうか確認するために倒し方を聞く。
「その、倒し方とかって……」
「普通の魔物と同じ様にぃ〜、首を斬れば死ぬと思うのでぇ〜、まず四人で足を斬ってからぁ〜、最後にお姉ちゃんがぁ〜、首を斬りますぅ〜」
「簡単じゃな。パラン、やろう!」
アマダスが私の手を握り、顔を覗き込んで来る。確かに簡単そうだけど……何か嫌な予感が……
「もし、誰か一人でも危なくなったら、逃げるから。それにラト、パラン、アマダスは私が守るって約束する。命に変えてもね。だから、大丈夫」
どこか落ち着くその声に顔を上げると、ミラーナさんの金色の瞳が私の心の中を覗いて笑う。その瞬間、心の中でざわつく嫌な予感が、スッーと消えて心が落ち着く。
だから私は深呼吸をして、
「分かりました。やります」
しっかりと前を向いて返事をした。
◆
アトヤ王国を出て、三十分程森の中を歩き続ける。先頭を歩いているミラーナさんが、重いオーラを出しているおかげか、魔物とは今のところ遭遇していない。
けれど、所々に魔物と人が戦って出来た形跡や、人か魔物かは分からない血があって、だいぶ人と魔物が戦っている事が伺えた。
そんな血や痕跡を見て、私が表情を曇らせていると、
「パラン。我は何がっても、パランを守るからな」
アマダスが手をぎゅっと握ってくれて、優しくそう言ってくれる。だから私は、ありがとう、とアマダスにお礼を言って、手を握り返した瞬間、
「しっ、もう近い」
ミラーナさんの声が聞こえて、視界が開けた。そこはどこか空気が重く奥には禍々しい洞窟がある、あまり長居したくない場所だった。
と、ミラーナさんは先程まで放っていた重いオーラを消して、私とアマダスに交互に視線を向けて、静かに口を開く。
「パラン、アマダス、気を引き締めて。あの洞窟の中にいるはずだから。準備はいい?」
その言葉にアマダスも私も頷く。すると、ミラーナさんは洞窟に手のひらを向けて、低い声で魔法を唱える。
「『蒼炎渦』」
その瞬間、辺りに何個もの蒼い魔法陣が展開され、一番大きな手のひらの前にある魔法陣が光を放つと同時、ダンジョンで戦ったドラゴンの火力を軽く超える程の、蒼い炎の柱が地面を抉り、洞窟を貫通し、森を切り裂き貫いた。
「す、凄いぞ!」
そんな魔法をアマダスは興奮しながら、私は引き気味に見るけれど、ラトとミラーナさんは一つも表情を変えず……
少し時が経ち、蒼い炎の柱は消え煙も晴れていき、抉れた地面と吹き飛んだ洞窟、切り裂かれた森が見えるようになって、
「えっ……」
私の体の中を、恐怖がいやらしく舐めてきた。
面白い、続きが読みたい、そう思った方はぜひブックマーク!それと、
☆☆☆☆☆
↓↓↓
★★★★★
広告下の星を押してポイントを!ついでに、いいね!と思ったらいいね!ボタンもポチッと!
よろしくお願いします。




