60.後ろを向けば、嫌いな人が
「そうか!なら、アトヤ王国に行けばいいのか?」
「まあ、そうだな。アトヤ王国に行って、軽く探してみるといい。見つからなかったら、あそこは魔法使いもそこそこいるから、雇って持ち主を探してもらえば見つかるだろう」
「分かったぞ!パラン、アトヤ王国に行こう!」
クルガーの言葉を聞いて振り返って来たアマダスは、どこか楽しそうにそう言って、私の方を見てくる。
でも、旅行かなんかならまだこの王国にいるかも知れないんじゃ……いや、それを言ったらここにいる貴族に話を聞かないといけなくなるよね。それだったら……
「明日、行ってみようか」
そう言うと、アマダスはにっこりと笑って、
「行こう!クルガー、ありがとな!」
「おう!二人とも気を付けろよ!」
「はい、ありがとうございました」
クルガーに私とアマダスはお礼を言って、アマダスと一緒に手を繋いでお店を出る。
「雨が止んでおるぞ」
「そうだね。勝負は引き分けで……虹がかかってるね」
「うお、すごいなあれ。虹というのか」
お店を出てすぐ私は思わず指を指してアマダスにそう言うと、アマダスは感心したように虹を見る。
それにしても、久々に虹を見た気がする。虹を見たら良い事があるって言うけど……もしかしたら、アトヤ王国に行って持ち主が見つかるかも知れない。
そして運良く、持ち主が不在で会うことなく、家の前に置くだけで良くなったり……
「なぁ、パラン。貴族って何なんじゃ?」
私の瞳を、アマダスは綺麗な黒い瞳で覗きながら、そう聞いてくる。
「貴族ってのはね、先祖が良い事をしたから、今でも王からいい扱いを受けてる人たちだよ」
「いい扱いとな?」
「うん。広い土地が貰えて、王国の問題を解決するための仕事をして、いっぱいお金を貰ってるんだ」
「そうなのか。いい人達なのだな」
「そうだね……」
きっと今の説明を聞いたら大体はそう思う。でも、性格の悪い貴族なんて、この世界にはごまんといる。お金にしか目がなくて……庶民の事を壊れやすいおもちゃだとしか思っていない、クズが……
「パラン。パランは貴族が嫌いじゃろ?」
いきなりアマダスがかけてきたその言葉に、ドキッとしながらも、何故か心が落ち着く。だから、私は一呼吸だけ置いてから、
「……うん。大っ嫌いだよ」
嘘偽りなくそう言うと、アマダスは私の手を思いっ切り握り込んで、少し寂しそうに言ってくる。
「パラン。我、一人でアトヤ王国に行った方が良いか?」
「どうして?」
「だって、パランは……」
「私、アマダスがいなきゃ寂しいよ。それに、アマダスを一人にさせるのは、貴族よりも嫌。一緒に行こう、アマダス」
寂しそうで悲しそうなアマダスに私はそう言って、微笑む。すると、アマダスは私を抱きしめて来て、優しい声で言ってくる。
「もちろんじゃ……パラン。我も、パランがおらんと寂しいぞ」
「今日は楽しかったね。帰ろうか」
アマダスの頭を優しく撫でながら言うと、私の胸の中でアマダスは頷き離れる。
そして一緒に手を繋いで、宿屋へと帰った。
宿屋に着く頃には、太陽がオレンジ色に染まり街を照らしていた。
私とアマダスは、カタラさんに挨拶を返して部屋に戻ると、そのままベットに寝転ぶ。
そして、
「アマダス、おやすみ。準備は明日の朝しよう」
「分かったぞ!おやすみ、パラン」
私はアマダスの手を握って、目を閉じた。
第一章終わりです。次から第二章です。
いやー、長いようで短かったです。ここまで。
でも、楽しく書けたので本当に良かったです。この調子で第二章も書いていければと思います。
それでは!
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