59.小角シシ
「でも、どうするの?」
「んー……取り敢えず誰かに聞いてみるか!」
アマダスはそう言って周りを見渡して、私達と同じ冒険者の格好をした男の人に声をかける。
「なぁなぁ、このぬいぐるみの持ち主を知らんか?」
「知らないな、ごめんね」
「気にするな!」
それから、何人か冒険者の格好をした人に声をかけていき、ある女の人にぬいぐるみの持ち主を聞いた時、
「ぬいぐるみを売っているお店に行ってみたら、何か分かるんじゃない?あそこの角を右に曲がって、しばらく行ったらあるから」
「おおっ!分かったぞ!」
「見つかるといいね」
「おう!ありがとな!」
そう言われたので、アマダスと一緒にぬいぐるみを売っているというお店に向かう。
「知らない人に声をかけれるなんて、アマダスはすごいね。アマダスが時々、羨ましくなるよ」
「そうか?我は人に声をかけるのが楽しいだけじゃ。パランは楽しくないのか?」
「楽しくないというか、苦手なんだよ。人と話すの」
「そうなのか。でも、ナールとは仲が良いじゃろ?」
「ナールとはね。最初に話しかけてくれたから」
二年前、この王国に来て冒険者になるための手続きをした時の受付がナールだった。色々と話しかけてくれて、その時仲良くなった。
もう、あれから二年も……
「パラン、パラン!あそこの店じゃないか?」
「う、うん、そうだと思うよ。窓から沢山のぬいぐるみが見えるから」
「早く行くぞ、パラン!」
はしゃぎながらアマダスは走り出して、私はまた手を引っ張られる。でも、流石に二回目。遅れを取ることなく私も走る。
「着いたな。入ろう、パラン」
「うん」
アマダスが私の手を引きながら扉を開き、一緒に中へと入る。
中は所狭しと、沢山のぬいぐるみが綺麗に並べられ、大きい物から、小さい物。奇抜な物から、シンプルな物まで種類豊富。
「可愛いぬいぐるみが沢山あるね」
「すごいな!生きているみたいじゃ!」
私とアマダスが、沢山のぬいぐるみを見てそんな感想を零していると、
「いらっしゃい!」
奥の方から筋骨隆々な丸坊主の男の人が出て来た。私は驚き、アマダスは不思議そうに首を傾げる。
「お主は誰じゃ?」
「俺はクルガー。この店でぬいぐるみを作って売っている」
「そうなのか。我はアマダス。こっちがパランじゃ」
「そうか。どんなぬいぐるみを探しているんだ?」
「違うぞ。ぬいぐるみを拾ったんじゃ。見てくれんか?」
そう言って、アマダスは収納魔法からぬいぐるみを取り出して、クルガーに渡す。
受け取るとすぐ、手際良くぬいぐるみの至る所を見て、軽く触ったクルガーは、
「小角シシのぬいぐるみだな。結構高い素材が使われているし、俺が作った時に付ける印もない。俺の作った物じゃないな」
そう言って、ぬいぐるみをアマダスに返した。
私は小角シシと聞いて、今日の昼に食べた小角シシの煮込みを思い出す。とっても美味しかったけど、お店で初めて知った。私が今まで知らなかっただけで、有名なのだろうか?
私がそう思っていると、喜々としてアマダスが言う。
「小角シシとな。今日の昼に食べたぞ!」
その言葉にクルガーは笑って、機嫌良さそうに口を開く。
「ハッハッハッ、あの肉の店に行ったのか。美味かっただろ。この王国だと、あそこでしか小角シシは食えないからな」
「そうなのか?」
「ああ、隣のアトヤ王国にしか小角シシはいないんだ。だから、アトヤ王国以外では、あまり知られてない肉でな。おそらくこのぬいぐるみも、アトヤ王国で作られた物だ。だから確実とは言えないが、持ち主はこの王国に旅行しにでも来た貴族のお嬢さんか、お坊っちゃまだろうな」
そんなクルガーの言葉を聞いて、私は少しだけぬいぐるみから視線を逸らした。
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