58.悲しさと寂しさと涙
アマダスは私の事をジト目で見ながら、
「またいつかか?ずるいぞパラン!」
そう言うけれど、仕方ないものは仕方ない。
「ごめんね」
「むぅ……分かったぞ」
私の謝罪に唇を尖らして、少しはぶてた様にアマダスが言葉を返した時、
「すいません、遅くなっちゃいました」
ミークがテナーを連れて戻って来た。そして、アマダスの着ている黒いワンピースを見てすぐに、
「確かに少し大きいわね。ちょっと良いかしら?」
「おう」
そう言ってぶかぶかな胸の部分を軽くテナーは触ると、魔法を唱える。
「『縮小』」
すると少しづつ服が小さくなっていき、ぶかぶかだった服が丁度いいサイズになった。
「おおっ、すごいな!」
「テナー先輩は昔、魔法使いだったんです。だからこれぐらい、余裕なんですよ!」
「きつくない?」
「おう!ぴったりじゃ!」
「それなら良かった。ではこれで」
アマダスがテナーの言葉に手を振って、テナーはまたお客さんがいる方へと戻って行く。
「それじゃ、これも買うぞ!『変更』」
アマダスはそう言って、いつもの白い方のワンピースに着替えて、私と一緒にローブと上着、そしてこのワンピースを持って歩き出す。
そしてついでに、アマダスの下着をささっと二着私が選んで、会計へ。
「アマダスちゃんは、魔法も使えて凄いですね!銀貨八枚です!」
「我は冒険者じゃからな!ほれ」
「はい、銀貨二枚のお釣りです。また来てくださいね、アマダスちゃん!パランさん!」
「おう!じゃーな」
「ありがとうございました」
私とアマダスはミークに手を降って、お店を出る。
「雨が少し弱くなってるね」
「そうじゃな。これからどうするんじゃ、パラン」
「んー、帰ろうよ」
「そうか、分かった。一緒に帰ろう、パラン!」
今さっき買った服をアマダスは収納魔法を使って仕舞うと、私に手を差し出してそう言ってきた。
私はそれに頷いて、アマダスの手を取る。雨の日に外に出たのなんて、半年ぶりぐらいだったけど案外悪くなかった。
アマダスとなら、やっぱりどこに行って楽しい。また、これたらいいな……でも、結局アマダスを知っている人には会えなかった。もしかしたら声をかけてくれると思ったのに……
アマダスは一体どこから来たのだろうと私は思いながら、アマダスに手を引かれるまま一緒に歩いていると、今日来た道ではない大きな道に出た。
「アマダス?」
何かあったのだろうかと名前を呼んでみると、アマダスは私の手を握ったまま急に走り出す。私はなんとかアマダスに食らいついて、こけずに追いかけていると今度は急に止まった。
「アマダス、急にどうしたの?もしかして、知ってる人に……」
「これは、なんじゃ?」
アマダスが何かを拾い上げて私にみせてくる。雨が降っているせいで泥に包まれているそれは、よく見ると何かのぬいぐるみだった。
「なんの生き物かは分からないけど、ぬいぐるみって物だよ」
「ぬいぐるみ……」
アマダスはそれだけぽつりと言葉を零すと、いきなり魔法を使い出す。すると、ぬいぐるみに付いていた泥が分離するよう離れていき、地面へと落ちた。
「すごい……」
「土魔法と水魔法を使っただけじゃ」
アマダスはそう言うと、ぬいぐるみを撫でてから続けて言ってくる。
「きっと持ち主がおるはずじゃ。一緒に探さんか?」
「う、うん。いいよ」
私の返事にアマダスはにっこりと笑った。
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