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56.青空が似合う人

 

「ど、どうして叩くんですか!」


 アマダスに叩かれて、結構痛そうに頭を抱えるミーク。そんなミークにアマダスは、


「すまん。じゃが話が長くなったら、叩けと言っておったからな」


 平然とそうミークに返す。それにしても、アマダスがこんな事するなんて珍しい気がする。


「大丈夫ですか?」


「全然へっちゃです。叩かれ慣れているので!」


 私の言葉に顔を上げたミークは、ちょっと涙目ながらも、元気にそう返してきた。そんなミークに私はどこか申し訳ないなと思って、


「取り敢えず、このローブは買います」


 そう言うと、ミークは嬉しそうに涙目の中笑って、


「ありがとうございます!」


 お礼を言ってくる。そして、他に何着か取っていたローブとコートをミークは片付けてくれる。


 片付け終わった頃には、痛がる様子もなく、涙目でもなくなっており、私達の方に向き直ってから、


「他の服もみますか?」


「おう!」


 そう言い、アマダスが返事をしたので歩き始める。


「それで、次はどんな服をみるんじゃ?」


「そうですね……アマダスちゃんは、ワンピース以外の服だと何を持っているんですか?」


「防具とマントじゃ!」


「防具ですか……あれ?それならもしかして、パランさんと同じ冒険者さんなんですか?」


「そうじゃ!我はパランと同じ冒険者じゃ!」


 アマダスの言葉に、驚きの表情を浮かべるミーク。


 まあ、私はいつも冒険者の格好をしているけれど、アマダスはそうじゃないし、しかも冒険者にしては若いから、驚くのも無理はない。


 と、驚きの表情から、悲しそうな表情へとミークは変わり、残念そうに言う。


「そうだったんですね。冒険者用の防具だったり、マントだったりも作れるので、アマダスちゃんの為に作りたかったです……」


「確かに、ミークが作っておったら、また違う良いものだったかもしれんな!」


「もちろんです!アマダスちゃんの為に、物凄い物を作ってましたよ!例えば……」


「それで、どんな服をみるんじゃ?」


「あっ、えーっと……そうですね、お出かけ用にワンピースの上から着る、上着を見ましょう」


 一瞬、声のトーンを低くしたアマダスがミークを遮ると、ミーク少し体をビクッとさせて話が本題へと戻る。


 なんだかミークが可哀想な気はするけれど、頭を叩くよりは全然良いので、私も気にせず会話を聞く。


「アマダスちゃんは、好きな色とかありますか?」


「青じゃな」


「でもそれだと、ローブと被りますし……水色はだめですか?」


「全然いいぞ」


「なら、こんな感じの上着はどうでしょう。とっても軽くてさわり心地も良い、シンプルな上着です。寝る時にも着れますよ」


 ミークに渡された上着をアマダスは着て、私に見せてくる。


「どうじゃ?」


「とっても似合ってる。アマダスは何を着ても似合うね」


「そうか!パラン、これ欲しいぞ!」


「いいよ」


「ありがとうございます」


 ミークが嬉しそうに微笑んで、アマダスも満足げに笑う。


「それじゃ、このぐらいでいいアマダス?」


「んー、そうじゃな……パラン、最後にワンピースが一着欲しいと言ったら、買ってくれるか?」


「もちろん、いいよ」


「ミーク。ワンピースを見にいくぞ!」


「分かりました!」


 アマダスの言葉を聞いて、元気よく楽しそうに返事をしたミークと一緒に、私とアマダスは歩き出した。

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