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43.優しくて強い人

 

「その、パラン。すまん……」


 手を握ったまま少し下を向いて、申し訳無さそうに謝るアマダスに、私は空いている左手で頭を撫でてあげながら、


「いいよ、気にしないで。でも、何で見たの?」


 優しく聞いてみると、アマダスはさらに下を向いて本当に小さな声で、言いづらそうに言う。


「み、見てみたかったんじゃ……パランの体を……」


「そ、そう」


 正直過ぎるアマダスの理由を聞いて、私は動揺しながらも、なんとか短く反応する。


 でも……先程分かったけれど、アマダスにも裸は見せたくない。絶対の絶対に……何があっても。


 だから私はアマダスをぎゅっと抱いて、今回だけはちゃんとした、絶対に後悔しない約束をする。


「私が死ぬ前ぐらいには見せてあげるよ」


 その約束にアマダスは、少し間を置いからちょっと元気に、文句を言ってくる。


「……流石に長すぎるじゃろ。もうちょっと、早くして欲しいぞ」


 でも、こればっかりは私も譲れない。だから、少し馬鹿にしながら文句を文句で返す。


「だめなものはだめ。アマダスは本当に我が儘なんだから」


 するとアマダスは今度、申し訳無さなんてどこへやら、少し怒ったように、そして清々しい程に正直に大きな声で言い返してくる。


「う、うるさいぞ……好きな人の裸を見たいなんて、普通じゃろ!我はパランが好きなんじゃ!大好きなんじゃ!」


「あはは、でもアマダスならもしかしたら……」


 アマダスの言葉が面白いやら恥ずかしいやらで、私が思わずそんな言葉を零してしまうと、不思議そうにアマダスが聞き返してくる。


「もしかしたらなんじゃ?」


 私は一瞬だけ言葉に迷ってから、アマダスの手を引いて、笑って誤魔化す。


「秘密。その時になったら教えるよ。よし、アマダス。パン、貰いに行こ」


「ちょ、教えてくれ、パラン!」


 でもアマダスならもしかしたら本当に、消してくれるかもしれない。私のあの、いらない過去を。


 ◆


 ドタドタと階段を降りて一階に行くと、カタラさんがすぐに私達に気付いて、


「元気ね。はい、どうぞ」


 どこか嬉しそうにパンを二つ渡してくれる。それを受け取って私もアマダスもお礼を言い、階段を上がってまた自分の部屋へ。


 部屋に戻ったアマダスは、どことなく私に怪訝な目を向けてくるけれど、そんな事無視して、


「アマダス、今日は何する?」


 パンを一つ口に入れながら、今日の予定について考える。


 それにしても正直な話、まあやる事がない。昨日ダンジョンに潜ったし、アマダスの防具だって揃えた。それに今は金貨が沢山ある。だから本当は働かなくてもいいし……こういう時は宿屋でずっとゴロゴロして過ごすのが無難。


 アマダスを拾う前だって週に一日、二日は宿屋でゴロゴロしてたし今日は久しぶりにゆっくりしたいな。


 なんて私が考えていると、アマダスがもぐもぐしていたパンを飲み込んで、思い出したように言う。


「そうじゃ!魔法じゃ!パラン、我が教えるぞ!」


「あー……」


 そう言えばそう。全部の魔法をアマダスは覚えて、私に教えてあげる、なんて言ってたっけ。


「本当に私、覚えれるかな……」


「覚えれるぞ!我が教えるんじゃから!」


「本当に?でも、そこまで言うなら……分かった。やろう。今日は魔法の修行に決まり」


 どこからか湧いている自信に満ちたアマダスの声に、私は少し楽しみになりながら頷いた。

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