36.幽霊とかじゃなくて
『無窮の扉・第四層』
四層になると、広い空間はなくなり壁や地面が明るい黄土色の土から、暗い鼠色の石に変わる。
それに伴って、出てくる魔物の種類も増え、ここから先は行けば行くほど、少しずつ道が複雑になり魔物の強さも難易度も、層を重ねるごとに上がっていく。
「ここが四層か。雰囲気が全然違うな。それに人もいるぞ!」
「そうだよ。この四層から十九層までが一番、冒険者が多く潜ってる層で、冒険者カードの青の線までの冒険者は大体その間で活動してる」
「パランもそうなのか?」
「うん。まあ、私は10層ぐらいまでしか潜らないけどね」
「10層、凄いな!我も、行けるか?」
「もちろん。アマダスなら余裕で行けるよ」
きっと私は行ったことのない、15層……いや、もっと下の20層だってきっと……
「なら、その時はパランと一緒に行くぞ!パランがおらんと面白くないからな」
アマダスはそう言って、にっこりと笑う。でもまあ、アマダスは本当に行けるとして……私はそんな下まで行けるだろうか?
アマダスのおかげで私は今、冒険者カードには青の線が引かれているけれど、他の青の線の冒険者と比べたら、まだ私はまだ全然弱い。
だから、もっと強くなってからじゃないと……昔の私ならこんな事思わなかった。でも、最近ふと思う。強くなれば、もっとアマダスに近付ける気がする。だから……
「ねぇ、アマダス。五層についたら魔法教えてよ」
「もちろん、よいぞ!パランにだったら、我に出来ること、何でもするぞ!」
「ありがとう」
私のお礼の言葉にアマダスは一瞬、不思議そうな顔をするけれど、ぱっと笑顔になって嬉しそうに言葉を返す。
「おう!」
それからしばし雑談をしながら、四層の丁度中間ぐらいを通り過ぎ、冒険者が見当たらなくなってきた時、アマダスは何故か急に指を指して、
「パラン、あそこに誰かおるぞ?」
入り組んだ道の真ん中で、急にまたそんな事を言い出した。
「えっ……また?嘘でしょ?」
アマダスが指差す先を見ると、そこには案の定何もない。私は首を振って、
「流石にまたはないでしょ」
「……なら、誰じゃろうな?」
「魔物かなんかじゃない、かな……」
アマダスが不意に首を傾げて、そう言ってくる。私はちょっと怯えながらも、止まることはなく魔物だろうと言い聞かせて、進んで行く。すると、
「そう言えば、どうしてそんなに手を握ってくるんじゃ。さっきもそうだったが、どうしたんじゃ?」
「い、いや、何もないよ……気のせいじゃないかな?」
私が苦笑いを浮かべながら誤魔化すと、アマダスは不意に無表情になって……いきなり黙る。
「アマダス……?」
私がそう呼んでも反応してくれなくって、どこか一点を見つめだす。私は怖くなってアマダスに引っ付くといきなり、
「うわっ!」
「うぎゃー!!」
「あははっ、パラン面白いな!」
「ア、アマ……アマダスっ!」
アマダスが大笑いする横で、私はアマダスの手を思いっ切り握って、バクバク鳴る心臓を鎮めようと深呼吸を繰り返す。
やられた……こんな事してくるなんて、思ってもなかった……
「パラン、怖かったか?」
「こ、怖くなんてなかったし。もう、アマダスなんて知らない」
「ごめんな、パラン」
「……次やったら、許さないから」
私がそっぽを向いてそう言った時、道の角から今度は本物の魔物が姿を現した。
「あれはなんじゃ?」
「ゴブリンだよ。アマダス、見てて」
私はアマダスの手を離すと、剣を抜いて走る。そして特に魔法も使わずに、首を綺麗に切り落とす。
それを見て、アマダスは、
「パラン、凄いな!我にも教えてくれ」
子供のような無邪気な笑顔でそう頼んできた。
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