35.無窮の扉
今日は、あと一話投稿します。
「よし、アマダス。今日は五層まで行ってみよっか」
「おおっ!我、頑張ってみるぞ」
ダンジョンの入口を風魔法でゆっくりと降りながら、機嫌のいいアマダスとそんな会話をする。
そしてすぐ、ふわりと地面に足が付き、アマダスにとっては二回目のダンジョン攻略となる。二回目ともなれば、やっぱり少し慣れるもの。
「こっちか?」
「うん」
私が道を教えなくても、アマダスはダンジョンの中を迷わず進んで行く。
どうやら、三層までの道のりは覚えているらしく、すぐに二層へと下りる。
「これは何じゃ?魔物か?」
「そうだよ。スライムって魔物だよ」
二層では数体のスライムに遭遇して、アマダスは物珍しそうに観察した後躊躇うことなく倒し、特段時間もかからずに三層へと到着した。
「やっぱり、三層も魔物がいるね」
アマダスがドラゴンを倒したからか、二層、三層とも魔物が復活して、行く宛もなく彷徨っている。
どうやら、いつも通りの見慣れたダンジョンに戻ったらしい。
私はそれにどこか安心して、
「それじゃ、ここからは私が案内するよ」
今度は、私がアマダスの手を引いて歩き始める。
「アマダス。四層からは気を付けてね。強い魔物が出始めるから」
「分かったぞ」
「それと、出来るだけ敵を魔法で消さないでね?」
「それは、どうしてじゃ?」
「冒険者協会で売れなくなっちゃうから。アマダスの魔法は威力が桁違いだから、多分魔物が消滅しちゃう。だから、剣で仕留めてみよ。使い方教えるから」
「分かったぞ!楽しみじゃな。パランは器用じゃから、上手そうじゃ」
私のどこを見て、そんなこと思ったんだろう?全然、器用じゃないんだけど……
アマダスの少し重い期待を感じながらも歩いていると、アマダスがドラゴンを倒した場所に。まあ、特に何もないので気にすることなく通り過ぎようとする。すると、
「誰かおるぞ、あそこ」
「えっ……」
明らかに何もない空間を指さして、アマダスはいきなりそう言った。
「や、やめてよ。誰もいないよ?ね?」
「いや、おるぞ。見えぬのか?」
「いや、いやいや、意地悪ならやめて?ほら、行くよ」
私がアマダスの手を思いっ切り握りながら、歩き始めようとした瞬間、
「バレてしまいましたか。すごいですね」
「うひゃっ!」
何もないところから、いきなりにゅるっと人が出てきた。
「パラン、何を驚いておるんじゃ?」
「はは、すいません、パランさん」
アマダスの不思議そうな声に次いで、どこかで聞いたことのある声がまた聞こえてくる。その声に私は、アマダスにぎゅっとくっ付いて、声の主を見てみる。
「コ、コメット……さん?」
「はい。こんにちは」
私はその姿と声にホッと胸をなで下ろして、呼吸を整える。幽霊とかじゃなくて、人だった。きっと認識阻害の魔法を使ってたんだ。良かった……
「それにしても、何をしておったんじゃ?」
「魔物の調査です。魔物が消失した原因と、復活した原因を調べているんです」
コメットはそう言って、何枚かの綺麗な字が書かれた紙をひらっと見せてくれた。
「……は、覇者になると、こんな仕事もあるんですね」
「あはは、まあ状況が状況なもので」
コメットはそう言って、少し笑う。その笑みはなんだか疲れているようで、きっとこれ以上ここにいても、迷惑をかけてしまう。
それに、特にコメットに用事があるわけでもない。なら尚更、私達は速く進んだ方がいい。
「行こう、アマダス。コメットさん、失礼します」
「はい。また、どこかで」
コメットのその言葉にアマダスが手を振ると、慣れたようにまた姿を消して、気配がなくなる。流石覇者。音一つしなくなって、消えるところを見たのにどこにいるのか分からなくなる。
私もこれだけ魔法が使えたらな……なんて思っていると、いきなり手をアマダスに引っ張られて、
「パラン、力を入れ過ぎじゃ。離れなくなってしまうぞ?もっと、優しく握ってはくれんか?」
お互いに握っている手を、私の前に持ってきてそう言ってきた。
私は少し慌てて、握っている手の力を抜いて謝る。
「ごめんね、痛かったよね。次からは気を付けるから……それじゃ、行こう」
「そうじゃな、パラン」
私はアマダスの返事を聞いて、久しぶりの四層へと向かった。
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