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32.ごちそうさま

 世界で一番可愛い……なんて言葉を好きな人から言われれば、誰だって恥ずかしくなるし顔を赤くすると思う。


 アマダスも私も誤魔化すように下を向いて、互いにちらっと相手を見てはすぐに視線を戻す。今まで生きてきた中で、こんなにも恥ずかしさを感じることなんてなかった。


 私は冷静になろうと、息を吸って少しだけ落ち着きを取り戻すと、自分のスカートを掴みながら言う。


「あり……がと」


 その声にアマダスはコクリと頷く。今まで生きてきて、あまり褒めてもらった記憶がない。だからだろうか、今になってちょっと泣きそうになるけれど、それをぐっと堪えて、


「アマダス、見て」


 その場を一周くるっと回る。いつも着ている冒険者用の服と違って、ちょっと上も下もスースーするけれど、これはこれで嫌いじゃない。


「可愛いですよぉ〜、はいどうぞ〜」


 スカートをヒラヒラさせていると、急にラトが後ろから料理をたくさん持って、戻ってきた。そして、料理をテーブルの上に並べてくれ……


「悪いんですけどぉ〜、先にお代が銀貨5枚ですぅ〜」


 少しだけ申し訳無さそうにしながら、手のひらを出してきた。そこへ、私が言うよりも早く、アマダスが理解したように金貨1枚を収納魔法から出し渡す。それを受け取ったラトは、お釣りに銀貨5枚をアマダスに渡して……


「それでは〜、私は少し掃除してるのでぇ〜、気にしないで下さいねぇ〜」


 少し焦っている雰囲気だったラトは、そう言うとそそくさとお店の奥へと消えていった。でも、私はそんな事を気にしている場合ではなく、


 ……やばい、どうしよう


「ア、アマダス……その隣に座っても、いい?」


「お、おう……」


 お互いにまた気まずい空気が流れる中、アマダスもどうしたらいいかと、私にチラチラと視線を向けてくる。


「食べても……いいよ?」


 私がそう言うとアマダスは、ゆっくりと料理に手を伸ばして食べ始める。私はそんなアマダスを取り敢えず見続ける事にして、静かに食べ終わるまで待つ。


 でも、アマダスの食べる姿は見れば見るほどに、本当に可愛くって……


「美味しい?」


 私が作った訳でもないのに、そんな事をつい聞いてしまう。そんな私に、アマダスは少し戸惑いながらも頷いて、笑って返してくれる。


「お、美味しいぞ」


 私はその返事が何故か無性に嬉しくって、


「アマダスって、どうしてそんなに可愛いの?」


 つい、アマダスが困るであろう質問をしてしまう。けれど……


「そ、そんな事を言ったら、パランだって……」


 アマダスは恥ずかしそうに、そう言葉を返してきた。私はまさか、そんな言葉を返してくるなんて思ってもなかったので、思わず下を向いてしまう。


 どうやらアマダスは、ちょっとずつ慣れてきているらしい。


 それからしばらくは互いに無言の時間が続き、気が付けばアマダスは料理を全て食べ終わり、イチゴのショートケーキのみに。


「最後は、一緒に食べよっか。……あーん」


「なら、我も……あーん」


 お互いに、視線をそらしながらも自分のケーキを相手に食べさせて、あっという間に完食した。


「ごちそうさまじゃ」


「私も、ごちそうさま」


 ほぼ同時に私達が言い終わると、そのタイミングで奥からラトがやってきて、


「ちょっと急に急がせちゃって〜、ごめんなさい〜。私この後しばらくぅ〜、お姉ちゃんに会いに〜、アトヤ王国に行く事になったんですぅ〜。だから〜、気が向いたら旅行がてらぁ〜、私に会いに来てくださいねぇ〜」


 言葉を言い終わると、テーブルの上のお皿全てを魔法で片付け始める。私達は、その間邪魔しないようにお店の出入口へ。


 十秒もしない内に、お皿を片付け終えたラトは、アマダスが持っている私の服を確認してから、


「『変更(チェンジ)』」


 そう私に魔法をかけて、メイド服から先程まで着ていた冒険者用の服に変えてくれる。


「メイド服〜、大事にしてくださいねぇ〜」


 ラトのその言葉とほぼ同時に、アマダスがメイド服を収納魔法にしれっと入れて、ラトは何故かそれを微笑ましそうに見てから、私達と一緒にお店を出る。そして鍵をかけ終えると最後、楽しそうに笑って言う。


「少し遅れちゃいましたけどぉ〜、ドラゴンを倒してくれた事ぉ〜、感謝ですぅ〜。また、会いましょうねぇ〜」


 そう言って手を振りながら歩いて行くラトに、私とアマダスは手を振り返して……ふと、思い出す。


「アマダス。武器屋、行こっか」


「そうじゃな!」


 何故か元気なアマダスと一緒に、私はラトと違う方向へと歩き出した。

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