27.チェックメイト
「はぁ……はぁ……」
体力も魔力も、もうすでに限界で、走るのが苦しくて苦しくてたまらない。先程から追手の気配はないけれど、止まってはいけない、そんな予感がずっと頭の中をこだまして、私は走り続けている。
魔法の修行をしていた時でさえ、こんな苦しい時は無かった。本当はすぐにでも宿屋へ帰りたい。そして、アマダスに会って……抱きしめたい。
ああ、アマダスは今何をしているんだろう。気持ち良く寝てるのかな……
「もう、終わりかな?」
私がアマダスの事を考え、一瞬下を向いた瞬間、目の前にフードから赤い瞳を輝かせたザクロが現れる。
どうやらここで終わりらしい。もう逃げれる程に、私は動けない。
「よく頑張ったね」
ザクロは笑ってこっちを見る。私はその顔が気に食わず、少しイラッとする。だから、私はその顔から手に待った袋に視線をやって、
「……この、お金で……何するの?」
「へー、時間稼ぎかな?……いいよ。私達はね、欲しい物があるんだ」
「……何?」
「ふふ、秘密」
ザクロはそう言って笑みを歪めると、一瞬で踏み込んで、私の前まで迫って来る。
ギリギリで私はザクロの攻撃を躱して、後に下がるけれど……すぐにまた攻撃を繋いで、私に近付いてくる。
強い。隙がない。ザクロの攻撃が早くなり、避け切れなくなり防ぐ事しか出来なくなる。一撃一撃が重くって、その場から抜け出せない。
私はだんだんと体に力が入らなくなって……結局、防ぎ切れずに飛ばされてしまう。
「終わりだね」
ザクロはそう言って、私から袋を奪い取る。そして、
「……これは」
驚いた表情で固まるザクロ。袋の中に詰めているのはただの石。当たり前だけど、お金はアマダスの収納魔法の中なんだから、こんな所にある訳無い。
「お金は?お金はどこにやったのっ!」
ザクロが袋を投げ捨てて、私を睨む。そんなザクロに私はできる限りの皮肉な笑みを浮かべて、
「どこだろうね」
そう言うと、ザクロは……
「アマダスちゃんの所よね?」
「えっ……」
怒っていた表情から、楽しそうな表情へと一瞬で変わって、私の瞳を覗き込む。体が、また動かない。落ち着きだしていたはずの息が上がって、嫌な汗が出る。
「ねぇ、私以外の人どこに行ったと思う?……そう、アマダスちゃんの所よ」
耳元で囁かれたその声に、私は必死に動こうと藻掻くけれど、体はぴくりともせず……
「チェックメイトって、言ったでしょ?聞こえないんだもん。ずっとずっと、袋から金貨と金貨がぶつかる音がさ」
「ザ……ザクロ、アマダスを……」
「無駄だよ。それじゃ、パランちゃん」
ザクロの手にはいつの間にかナイフが握られていて……腕を振り上げると同時に、ナイフの刃の先が私に向いてキラリと光る。
ああ……死ぬんだ。私、頑張れたのかな……
私はそんな事を思いながら、諦めて目を瞑る。その、瞬間だった。ナイフが私に刺さるほんの直前で、白い光に私は吹き飛ばされた。
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