2.パンを貰う
「あら、お帰りなさい……その子は?」
急いで宿屋に入ると、何も知らない受付のカタラさんが、心配そうに声をかけてくれる。
それに私は焦った声で、
「えっーと、気にしないで下さい」
「そう……でも」
「だ、大丈夫ですからっ!」
早足で歩きながら、階段へ。カタラさんには申し訳ない。でも、今は急がないと。
私の部屋は二階の階段を上がってすぐ。
そこまで少女を運んで、扉を開けて中に。ベットにゆっくりと寝かし、息を吸って、それから回復魔法を。
『ヒール』
私の使える魔法は弱いから、酷い怪我だと治せない。でも、この少女は意識を失ってるだけで、怪我はしていないはず。
だから、少しの間かけ続ければ、明日には目が覚めるはず。手遅れでなければ、の話だけど……
それから私はしばらくの間、魔法をかけ続け……
「これぐらいで、いいかな」
少しの疲れと眠気を感じながらそう呟き、ベットにもたれて座る。
今日の薬草を探して取った疲れと、魔法を使った疲れが、同時に襲ってくる。
だから、このまま眠ってしまってもいいように、近くにあるテーブルの上にさっき貰ったちっぽけな袋を投げて乗せ、腰にかけた片手剣を床に置く。
その瞬間、明るかった部屋が急に暗くなり、窓から月明かりが差し込む。
それを見て、私はそのまま目を閉じて……息をゆっくりと吐くと同時に、静かに眠りに落ちた。
●◇●◇
痛い……私、どうして座ったまま寝てるんだろう……
朝日が窓から差し込み、鳥の鳴き声が聞こえてくる。どうやらもう朝らしい。私は、部屋を出て一階へ。朝ご飯を貰いに行かないと。
「おはようございます。あっ、パランちゃん、おはよう」
「おはようございます」
「はい。どうぞ」
明るい声で、カタラさんが紙袋に入ったパンを渡してくれる。私以外にも一階の広場には、この宿屋に泊まっている人達がちらほらいて、その人達にもカタラさんは明るい笑顔で、紙袋を渡していく。
私はそんな姿を少し眺めて、それから二階へ上がろうと体の向きを変えた瞬間、
「あっ、待ってパランちゃん!」
カタラさんに呼び止められた。私、何かしただろうか?
「昨日、部屋に連れ込んでた女の子。あの子は、友達?」
部屋に連れ込んだ女の子……?
「えっーと、その……」
一体なんの事を言って……
「もしかして、彼女?」
「ち、違います!そ、その……知り合い、です」
私が思わず反射的にそう返してしまうと、カタラさんの笑顔がさらに明るくなって、
「やっぱりそうだったのね。はいこれ。その子の分よ」
そう言いながら、カタラさんは紙袋を差し出してくれる。でも……
「そ、そんな、悪いです」
「いいの、いいの。ほら」
笑顔で私に無理矢理紙袋を押し付けて渡すと、逃げるようにカタラさんは受付へと戻って行く。
それを見て、私は仕方なく紙袋を二つ持って、部屋へ。
思わず嘘なんかついちゃって、本当、悪い事をした。なんか心苦しい、そんな気分で扉を開け、いつもの様にテーブルに紙袋を置く。
それから、扉を閉めてベットに座ろうと、視線をベットにやると……
「……よっ!」
ベッドの上で、可愛い顔をした少女が一人でちょこんと座っていた。
あと一話、もしかしたら今日投稿するかもしれません。
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