19.覇者
アマダスと一緒に冒険者協会へ行くと、入口の前に受付のナールがニコニコしながら立っていた。
「パランさん、アマダスさん。お待ちしておりましたよ。どうぞこちらに」
ナールに言われるがまま冒険者協会の中に入ると、そのまま受付の奥にある階段へと案内される。
「上で、覇者であるコメットさんがお待ちです」
コメット……噂では剣術の天才とか言われている。でも面識はない、というかほぼ冒険者協会の一階に顔を出さないので、あまり話題にあがることがない。ダンジョンですれ違ったとか、それぐらい。
階段を上がって行って、最上階の七階へ。扉をナールがノックして中へ、それに続いて私とアマダスも。
「お待ちしておりましたよ、アマダスさんとパランさんですね」
部屋の中央の椅子に腰掛けて、何やら資料を見ていたコメットが、挨拶をしてくる。覇者とはあまり思えない雰囲気の男性。
「今回は助かりました。僕からもお礼を」
頭を軽く下げ、また私達に視線を向ける。あまり私はこういうの嬉しくない。ドラゴンのお金はどこだろう?
「それでは本題です。ここにお呼びしたのは、ドラゴンを本当に殺したのか確かめるためです。パランさんがトドメを?」
「い、いえ、アマダスがトドメをさしました」
私の言葉に驚きながらも、コメットが机の引き出しから、私の剣の破片を取り出す。
「アマダスさんの魔力とこの剣に残った魔力が同じであるか、確かめさせて下さい」
「いいぞ。じゃが、どうするんじゃ?」
「体に魔力を纏っていただければ」
「こうか」
アマダスは特に集中する様子も見せずに、魔力を纏う。私も出来るようになりたいな……
少しだけ間を空けてから、コメットは頷く。
「ドラゴンの買い取り額ですが、金貨750枚です。下で受け取ってください。それと、それぞれ冒険者のランクを無条件で上げますので、冒険者カードを提出してくださいね。アマダスさんは二本、パランさんは一本です。これからも期待していますよ」
えっ……?金貨750枚?それって……
「パラン、どうしたんじゃ?」
「いや、その……何か食べたい物ある?」
「パランとなら、なんでもいいぞ!」
「まあまあ、その話は下で。それでは失礼します」
ナールにそう言われて、部屋から出る。アマダスはきっと分からないと思うけど、金貨が10枚あれば一年は遊んで暮らせる。
750枚なら、アマダスと私の二人で37年ぐらい遊んで暮らせる。もう、冒険者をやらなくてもいい。ずっとアマダスと二人で……
「パラン?何ニヤニヤしておるのだ?何か食べたい物でも、想像しておるのか?」
「い、いや……いや、そう!まずは、私の好きな物を一緒に食べようアマダス」
私が焦り、誤魔化すようにそう言うと、アマダスは嬉しそうに、私の手を握って言う。
「おう!パランの好きな物、我に食べさせてくれ!」
□▲□▲
パラン達が、部屋を出て数分後。書類の整理をしているコメットの前に、一人の女性が姿をあらわす。
「……どうだった?」
「お久しぶりですね。新種のドラゴンを殺したのは、あの少女二人で間違いありませんでした」
「そう……冒険者、続けてくれるかな……」
「さあ。あっ、それともう一つ。あなたの妹さんのおかげで、犠牲者が数名で済みました。第四層に避難させた冒険者は皆、助かりましたからね」
「流石、私の妹。最後に……マスターから伝言。魔物消失の資料早く」
女性はそう呟くと、空間に溶けるように消える。コメットは近くに人の気配がないことを確認して、ため息と愚痴をどんより口から漏らす。
「はぁ……私は雑用係ではないはずなのに。魔物が一時的に消えた理由なんて知りませんよ。これからまたダンジョンの調査ですか。南も本部も、仕事を増やさないで欲しい……」
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