1.少女を拾う
作者の海神です。
本作もどうかよろしくお願いします。
……眠い……とても眠い……
「……ここは……」
来た事のない場所。見た事のない建物。そして……知らない空。
分からない……何も……分からない……
視界が歪み出して、体から力が抜けていく。立つことですら、もう……限界。
ああ、地面がどんどん近付いてくる。少しずつ、少しずつ、体が地面にぶつかって、暗闇に……呑まれ……ゆく……
●◇●◇
「素材の売却分です。どうぞ、お受け取りください」
そこそこ仲のいい、ギルド職員のナールに、笑顔でちっぽけな袋を渡される。
「あっ……ありがとう」
「いえいえ、お気になさらず。それでは次も、よろしくお願いします」
「は、はい……」
自分でも分かるぐらいに落ち込んだ声で、一言だけ言葉を返して、スタスタ歩いて、冒険者ギルドを出る。
今日は酷い。これじゃ、食費の足しにしかならない……どうしよう……。
だいたい、今日はおかしかった。いつもならいる魔物が、ぱたりといなくなって……薬草だけしか取れなかった。
ついてない。運がない。お金もない。全く持って、楽しくない。
月明かりと、街灯に照らされて、一人心の中で文句を言いながら帰る。
空は澄み渡った綺麗な星々と、とても綺麗な月が私を見下していて……いかに自分がちっぽけか、よく分かる。
こういう日、私はいつも思う。何かが起きて欲しい。大きな隕石が空から降ってきて、世界が滅びるとか……うん、ありえない!
よし、早く帰って、温かい飲み物でも飲んでゆっくり寝よう。今日は珍しく、少し寒いから。
●◇●◇
数分歩いて、やっと宿屋が見えて来た。
リーン王国……私が今いる王国です。その王国の出入り口に一番近い宿屋が、私の生活の拠点。
周りは人通りが多くて賑やかな道に、その道を照らす明るい建物。そして、わいわいとした人の話し声に、人が歩く足音。
二年も毎日見ていれば飽きてしまう程に、つまらない景色。
そんないつも通りで、代わり映えなんかしないはずの景色が……今日だけは違った。
あれは、人?人が倒れている。銀髪の……おそらくは少女だ。
私は宿屋を通り過ぎて、そんな倒れている少女に近付く。出入り口からほんの数十歩。そんな場所で、私よりも背の低い、銀髪の女の子がうつ伏せで倒れている。
近くを通る人は、視線だけをその少女に向けては……それから冷たくあしらう。
そんな光景を見ていると、昔の嫌な記憶が溢れてくる。
そんな記憶から逃げるように、私の口は思わず開く。
「大丈夫?えーと……」
可愛い顔……じゃなくて、良かった。ちゃんとまだ、呼吸はしてる。でも、意識がない。
と、取り敢えず持ち上げて……軽い。ビックリするぐらいに。でも、よかった。私一人で何とかなる。何とか出来る。
「待ってて……大丈夫」
久しぶりに心臓の鼓動が聞こえそして、少しだけ、ほんの少しだけ、期待が胸を横切る。
それから私は、心の中でまずは少女を助けようと、そう思いながら一歩、足を踏み出した。
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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よろしくお願いします。