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最強漁師の異世界遠洋漁業物語  作者: spear head 杉本
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予兆

      第5章  どうする女神様


 漁師たちと和解し、夜通し酒を飲み交わした大介たちはそのまま酒場で眠ってしまった。とはいえ大介はまだ10代の子供なのでアルコールの類は飲まなかったが。漁師たちも床にあちこちで転がっていた。

 それにしても光虎の酒豪ぶりは地元漁師たちが束になっても敵わない。漁師たちが酔い潰れても最後までゲラゲラ笑いながら酒を喰らう光虎に、大介は呆れていた。しかし光虎には人が集まる、それは天性のものだろう。

 朝日が窓から差し込むと大介の顔を照らした。大介は眠気を帯びた欠伸をすると薄らと目を開けた。窓の前のテーブルで頬杖をついて大介を見下ろす光虎は逆光も相まり美しく見えた。


 『女神様は本当に美人だなぁ、、』


 思わず大介は思った事を口走ってしまい両手で口を抑えたが、光虎は聞き逃さなかった。


 『なになになに〜大介ぇ、よく見えるお目目をしてるじゃない〜♡?』


 大介は、光虎は黙っていたら本当に美しい女神なのが惜しい、と思いながら狸寝入りを決め込んだ。朝から女神のハイテンションにはついていけない。

 愛が身支度を整えていたのか、化粧室から出てきた。凛とした黒髪猫耳メイドの愛も光虎に負けず劣らずの美少女だ。ただ、素顔がメンヘラってのが気にはなるが。


 『光虎様、一刻も早く勇者一行を探し出さなければなりません。今後如何様にされますか?』


 『うーん、、直ぐにも探したいけど当てもなければ情報もないのよね、、それにこの港に暫くすれば龍魔王の軍勢が再度侵攻してくるのよ、、捨て置けないわ』


 狸寝入りをしていた大介はガバッと起き上がると光虎と愛の話に割って入った。


 『女神様、やっぱりここを見捨て行く訳にはいかないと思う。俺もコイツらと同じ漁師だ。港がこんなにされてやっぱ悔しい。何とか力になってやりてぇ』


 『あらあらまぁまぁ。大介さん。貴方、寝ていたんじゃなくって?先程の話しの続きをしようかしら?』


 『ん?光虎様と大介さんは何かお話をされていたのです?』


 大介は言葉を詰まらせ顔を真っ赤にさせた。


 『ん?大介さん?』


 愛の悪気ないツッコミが余計恥ずかしくなった大介は話を戻そうとした。


 『あ、あ、何でも龍魔王は人間を奴隷にして何かを作らせているらしいな、そんな事はさせられないよな!』


 『、、そうですね、大介さんの言う通りです。まずは目の前の問題から解決すべき、という事ですね』


 『ええ、決まりね。我らはここの港で龍魔王軍の侵攻を阻止するわ』


 そんなやり取りを漁師たちも聞いていたのかゴソゴソと床から起き上がってくると、皆、光虎の前に跪いた。


 『、、女神様。ありがてえ話しですが、昨日も話しましたが我らは既に戦う術もなく漁協の会議で龍魔王の軍門に降る事が決まっています、、』


 強面の兄さん、グラントが話し始めた。光虎は黙って聞いていた。


 『ただ、若い漁師たちは本当は納得はしていなかったんです。このアラン港を手放すのは領主アラン伯爵にも面目がたちません。アラン伯爵には若い漁師たちは随分世話になっています。まずは議長であるこの港の長と会って話しては貰えませんか?今日も本部で会議をしているはず、、』


 『あい分かりました。先ずは議長と会い、方針を固めましょう。ただ、龍魔王の軍に降りる事はあり得ません』


 大介は光虎の強い口調に少し圧倒された。

 大介、光虎、愛は漁師たちに連れられ漁協本部に入った。初老の議長、その兄、叔父、甥が会議室で座っていた。


 『女神様、議長と御一門衆です。この港の管理運営をされています』


  議長は光虎を舐める様に全身を見回した。


 『女神?あぁ、噂は聞き及んでいますよ。それにしても肌の露出が多い女神だ』


 『、、初めまして議長、早速ではあるが龍魔王の軍門へ降りる件について話をしに参りました、、軍門へ降る事、決してなりません。龍魔王軍とは断固戦って頂きたい、、』


 光虎は今朝から何やら口調が強い様子で大介は不安を感じていた。


 『これは如何に。流石はあの龍魔王の第五軍団長を倒された女神様。しかし、我らは先の戦いで多くの仲間を失っております、、。議会で敵の軍門に降りる事が決まっております故、、』


 光虎は議長の話を黙って聴いていたが、隣の愛に目を配ると愛は理解した様に呪文を唱えた。空中に小さな魔法陣が浮かぶと愛は手を入れて刀を一振り引っ張り出した。


 『、、てってれー、水神切兼光ぅ、、』


 愛は刀を鞘から抜くといきなり議長を斬り捨てた。


 『ぐわぁ!?』


 『あ、愛さん何を!?』


 大介は慌てて愛を止めようとした。光虎は冷たい瞳で議長の亡骸を見下ろしていた。若い漁師たちも突然の出来事に狼狽している。議長の親族たちも堪らず愛に抗議をした。

 

 『貴様!いきなり何をするか!貴様らが魔王ではないか!』


 『悪魔ども!我が弟を今すぐ生き返らせろ!』


 愛は紙とマジックを出して何やらその場で文字を書き出した。


 『ええ、分かりました。では閻魔大王にこの議長を蘇らせてもらう様、手紙を書きました。この手紙を閻魔大王の秘書官である篁様に、、貴方方が直接届けて下さい!!』


 愛は更に議長の兄、叔父、甥を斬り伏せると断末魔とともに一門衆は息絶えた。愛は閻魔大王宛の手紙を議長の兄の亡骸にそっと置いた。

 大介は何が起きているのか理解出来なかった。


 『、、まぁこの手紙には篁さんに4人とも地獄行きをお願いしているのですが』


 『あ、愛さん、いくら反対意見でもここまでするなんて、、』


 愛は議長達の血で滴る刀を振り、血を飛ばした後、刃を紙で拭いた。


 『、、大介さん。光虎様と私は昨夜一睡もしておりません。そこの漁師さんたちは誰一人酒場から出ていませんでした、、』


 『そ、そうなの?それとこれと何が関係あるの?』


 『、、、私達がメーア・ラ・メールに来て初めて会った人はそちらの漁師さん達で、他には敵の軍団長を退治した話はしていません。【人間】で知っているのは漁師さん達だけなんです、、彼らから話を聞かない限り議長達が知っている筈がないのです、、この話を知っているのは漁師さん達か、龍魔王軍か、、、』


 『あ、もしかしてこの議長たちは、、!』


 『そう、龍魔王軍の手下が化けていた、、』


 議長達の屍がグズグズと音を立てながら消えてしまった。残った骨はツノと尻尾があり明らかに魔物の姿をしていた。


 『、、恐らく港を次の侵攻で無血開城させて魔王軍側の損害を最小限に抑えようとしたのでしょう。敵軍は怪物の力押しだけではなく策士がいるようですね』


 『ご苦労様、愛。ていうか、この港に来てからずっと魔族の臭いが鼻についていたのよねー、早めに退治出来てよかったわ。この港はこれでクリアよ』


 大介はゾッとした。魔王とは知恵の無い野蛮な軍を率いているのだと勝手に考え、甘く見て自分を安心させていたのだ。光虎と愛がいればなんて事は無いと思っていたのだが、想像より龍魔王軍の恐ろしさが現実となってきた。


 『そ、そんなでは元の議長は、、』


 強面の漁師が膝を落とした。愛は一息ついて漁師に話しかけた。


 『恐らくはもうこの世には、、また折を見て篁様に確認しておきます』


 一行は一旦酒場に戻った。日は丁度真上に来ていた。


 『さぁさぁ一旦お昼にするわよ』


 『はい、お腹が空きましたね』


 魚は昨日大介が大量に取ってきていたので看板娘に頼んで人数分の食事を注文した。光虎は看板娘を呼ぼうと手を上げようとしたのを、大介が手を押さえつけた。光虎は何とか大介の腕を解こうと抵抗している。


 『あ、く、大介、何を!?気安く女神に触れるとは、、、この、、不調法者、、!貴方、私を可愛いとか美人だとか言っていたのは私に触れたかったと言う事!?破廉恥大介!』


 『は、ハレ、、!?バカ、女神様!酒飲もうとしてただろ!?それにそこまでは、、言ってねーし!』


 『ば、バカぁ!?貴方はまた神に対して不敬を!ってなら貴方は何処まで言ってたのよ!女神様可愛いって言ってたじゃない!イタタタ!貴方こそ馬鹿力じゃない!か弱いレディに手をあげるとは、、イタタタ!』


 『光虎様、、ここは大介さんが正しいです。ここで飲み出したら明日の朝まで酒宴になります。早急に策を考えねば、、それに光虎様はいつもお美しゅうございます』


 漁師たちはポカンとそのやり取りをしていた。タイミングを見計らいながら、強面の漁師が話に入ってきた。


 『、、女神様、この漁港は長を失い完全に孤立しました。ここは御領主様の居られる、アラン城に行ってみては如何かと、、。先日の龍魔王軍の侵攻にてアラン伯爵は獅子奮迅の働きをされていました。手傷を負われていましたので我々もご様子を伺いに行こうかと話していたところでして、、』


 光虎と大介はつかみ合いを止め強面漁師の話に耳を傾けた。


 『、、如何ですかい?女神様』


 光虎は愛に目を配ると、愛は目を閉じたまま頷き、返事をした。


 『あい分かりました。食事を摂った後、アラン城へ向かいます!さぁ腹が減っては何とやら、、娘よ、酒を、、!』


 光虎が看板娘に酒をオーダーしようとして手を上げたところをまたしても大介に阻まれた。


 『あ、貴方は神の行く道を何処までも邪魔するつもりね、、!なんという不調法者、、我が覇道を止めてみよぉお、、!』

 

 『女神様〜お待たせ〜!タイのカルパッチョとスズキの蒸し焼きでーす♪』


 『わあい♡いただきまーす!』


 光虎たちはアラン港の魚を堪能した。さっきまで口うるさかった光虎も魚を前に大人しいものだ。大介は愛に先日から登場している篁さんとは何者か聞こうとした。


 『愛さん、閻魔大王の秘書官の篁さんて何者なんです?』


 『あら大介さん。あの篁様をご存知ないのです?お正月に家族で百人一首した事は?』


 『百人一首?坊主めくりなら、、』


 『、、わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟、、という和歌を謳われています』


 『う、うーん、分からん!』


 『タカムラ様は御生前から閻魔大王の秘書官として、またかつての天皇に仕えたお方です。気性の激しい方で怒らせると百鬼夜行を率いる程ですわ、、我らは毘沙門天様の加護のもと光虎様が軍神になられてから時々篁様にお会いして大介さんの様に強い魂の持ち主を斡旋して貰っているのです、、またいずれキチンとご挨拶に行かなくては、、』


 『挨拶って、、えぇ、、地獄に行くのか??なんだかなぁ』


 『地獄には京にある寺の井戸から直ぐに行く事が出来ます、ここの龍魔王軍を討ち滅ぼした後、是非伺いましょう!』

 

 食事を終えた一同はアラン港の丘を越えた先に見える城、アラン城を目指した。石造りで西洋の城に近い。

 城門に一向が到着すると衛兵が槍を向け、怒鳴り立てた。


 『貴様ら!何者か!?、、あぁ、アラン港の漁師か、、後は見ない顔だが、、先の龍魔王の襲撃以降、擬態した魔物どもが領内に侵入していて厳戒体制を取っている。今は城に入る事はならない。龍魔王軍の再侵攻時には港に駆け付ける故、それまで港で待っていてくれ、、』


 『衛兵さん方!俺は港の若い衆を纏めているグラントだ!俺たちはこのまま帰るがこちらの3人をどうか伯爵に謁見させてやってくれ!こちらは龍魔王軍と戦うために違う世界から来られた女神様だ!俺たちは彼女達が漁協の議長達の偽物を退治してくれたのを見ている!必ず伯爵の力になってくれるから城へ入れてやってくれ!』


 グラントは衛兵が話し終える前に、光虎達を何とかアラン伯爵に取り次いで貰おうと頼み込んだ。


 『グラント、、ああ!近衛兵青年部団長のお兄さんでしたか!しかし、、我々の判断で外部の者を入れる訳には、、クラウド団長をお呼びするか、、暫くお待ちを!』


 グラントの必死の願いが通じた様で衛兵は足速に城内へ走った。


 『グラントさん、ありがとうございます。何とかなりそうですね。人の必死の願いは必ず叶うものに御座います。ましてや今は貴方には光虎様がついて居られます』


 グラントは照れ臭そうに頭を掻いた。

 実は光虎はグラントが熱弁している際、後ろからグラントの言葉に神通力を乗せていたのだ。グラントの発言は言霊となり衛兵の魂を揺さぶったのだ。

 先程城内に入った衛兵が上官を連れて戻ってきた。


 『兄さん!よくぞ無事で!』


 『クラウド!お前も龍魔王軍の攻撃を生き抜いていたか!』


 兄弟は再会を喜び抱き合った。


 『兄さん、港の漁師たちも随分やられたみたいだが、、』


 クラウド団長は心配そうにしたが、グラントの後ろに知った顔触れを見て少し胸を撫で下ろした。


 『兄さん、女神の一向と言うのは、、』


 『あぁ、こちらの女神様が上杉光虎様、ヴァレットの愛さん、別世界の漁師の神嶋大介だ』


 『、、女神様。龍魔王軍の襲撃からまだ日が浅く城内は緊張しています。今日は兵舎でお休みください。明日アラン伯爵に必ず取り次ぎをしますので。兄さん達も今日はこちらで休んでくれ』


 クラウドは申し訳なさそうにし、頭を下げた。日は随分陰ってきた。

 兵達は日が暮れても兵器の準備や夜襲に備えての警備、訓練をしていた。衛兵に連れられ、大介達は空き兵舎に入った。

 大介、光虎、愛はメーア・ラ・メールに来てから初めてベッドを見た。こちらに来て半月が経とうとしていた。ようやく清潔なシーツとベッドで眠る事が出来ると大介は安堵した。


 『そういえば、長らく風呂にも入ってないなぁ、、』


 大介の何気ない一言。時々衣服は愛が日本の奉納の品を使わせてくれたので着替えは出来ていたが。忘れていた現実を思い出し、光虎と愛は慌てて自分の体臭を嗅ぎ出した。


 『女神たる私が、、、!身体が臭うなど!あってはならない!愛、直ぐにシャワーよ!ったく、何てこと!』


 『はい、衛兵さんにシャワーをお借りしましょう』


 愛は兵舎から出て衛兵にシャワーを貸してもらえるか聞くと現在城内には入れず、兵舎に備えている野戦用のシャワーしかないとの事。カーテンは用意してくれるらしいがシャワーは兵舎を囲って中庭のど真ん中。

 愛が兵舎に戻り、衛兵との話を光虎に伝えた。


 『な、な、な、、。女神が兵の前で裸になるというの?この世界を救いに来てこんな辱めを受けようとはー!』


 光虎は頭を抱えて床を転び回った。


 『光虎様、兵達は皆お忙しくしております故、、誰も見向きしておりません、、、』


 愛の一言が癇に障ったのか光虎は愛の前に立った。


 『、、愛さん?それは私が自意識過剰とでも言いたいのかしらん?しかし、それはそれでなんか腹立たしいわ!本来、軍神にして女神の私が肌を出して湯浴みをするというならば?男どもの羨望の眼差しがあって然り!』


 『あ、いえ、、しかしまぁ、、今はその様な時ではないかと、、』


 光虎は複雑な感情で納得してない様子だ。


 『、、もういいかー?俺も居るんですけど?先に浴びてくるぞ?』


 大介が着替えとタオルを持って中庭へ行こうとした。


 『アー!ダメダメ!もう行くから!待ってなさいよね、ったく!』


 光虎と愛は中庭にへ出た。木から木へ鉄パイプを渡している。よく見ると鉄パイプの腹に穴を開けた簡単なシャワー。横並びで3人ずつシャワーを浴びれる様にしてある。


 『、、コレがシャワーですって??カーテンで囲ってはいるけど兵舎の3階からは丸見えじゃない!それにお湯は出るのよね?』


 『兵舎からは距離もありますし大丈夫ですよ、光虎様。これまでの無人島生活を思えばシャワーという文明に触れられただけでも我々の勝利です』


 『、、ふっ。兵舎の真ん中で裸になって何が勝利よ!』


 『、、ですから誰も見ておりません、、それに光虎様の装いはもともと裸の様なもの、、』


 光虎はブツブツと文句を言いながらも衣類を雑に脱ぎ、木に掛けた。当たりはすっかり日も落ちて篝火かがりびが夜空を照らした。蛇口を捻ると鉄パイプに開けられた穴から湯が出てきた。


 『ん〜!まぁ湯は出る様ね、、久しぶりの湯浴みね!確かに今はこれで十分ね!』


 光虎は取り敢えずは満足の様子で鼻歌混じりでシャワーを満喫している。頭から湯をかぶると備え付けのシャンプーを手に取って話し始めた。


 『久しぶりね、愛とこうして湯浴みをするのは!』


 『、、そうですね、天界に来る前、、春日山城で輝虎てるとら様いえ、光虎ミコ様が景勝様や私を呼んで皆で温泉に入りました。あの頃は私も光虎様の姉上である仙桃院様の元で武芸を磨いたものです』


 『私が死んで景勝が家督をついで120万石の大名になったのには驚いたわ。愛もあの家康相手に喧嘩を売る様な真似をして』


 『、、私が書いた直江状ですね、、アレのせいで上杉120万石が30万石に減封ですから、、。腹をいくら切っても足りません、、』


 『まあまあ!よいよい!上杉家は石高より義を重じ、義を持って戦うのよ!そうやって上杉家に死してなお尽くす愛の忠義、私は嬉しく思っているから!』


 『、、はい。上杉家から受けた大恩、今後も光虎様の為に働きお返し致します』


 外でシャワー待ちをしていた大介は、光虎と愛のやり取りを聞いてなんとなく2人の生前の関係が分かってきた。生前の光虎は輝虎という大名だった事。光虎から家督を継いだ景勝と愛は共に大きな戦さをして負け、お家が傾いた事。光虎は慕われていたようだ。大介は光虎を少し見直した。


 『愛、よく見たら貴方。胸が大きくなったんじゃない!?』

 

 大介は即刻見直した事を撤回した。

 翌日、早朝より漁師グラントの弟である近衛兵団長のクラウドが西洋風の甲冑を身にまとい、息を切らせながらノックもそこそこに兵舎の扉をあけ、休んでいる光虎の元にやってきた。


 『女神様!火急の知らせにてご無礼ご容赦、、あ!』


 光虎は下着姿で寝ていたのでクラウドは慌てて兵舎の扉を閉めた。


 『な、な、女神とはあんな格好で寝ているのか、、!』


 クラウドは一呼吸おくと扉の前で用件を伝えようと声を張り上げた。


 『女神様!近衛兵団長クラウドです、身なりを整えられましたら至急登城ください!領主アラン様とお会い頂きたい!』


 『んん〜よく聞こえな〜い、、入ってらっしゃいな、、』


 『、、光虎様、、その様な格好では女神の威厳が損なわれますし、何より殿方が引いております、、何やら火急の知らせがあるようです。大介さんも起こして城へ急ぎましょう』


 愛は大介やグラントが休んでいる兵舎に走るとクラウドから言われたことを伝え、光虎の宿舎へ戻り、まだベッドから起きていない光虎の身支度を整えた。

 光虎は前日の不眠不休で漁師達を見張り、敵の間者でない事を確認し、漁協の偽議長一味と対峙したのだ。神通力の回復を図る為には休息と奉納が必要だった。

 愛は兵舎の外で待つ大介を中にいれた。

 

 『女神様、まだ寝てるのか?お、今日は衣装がフォーマルな和装なんだな』


 愛は光虎の変わりに大介に返事をした。


 『はい、本日は領主アラン殿との謁見ですから、、ギリギリまで光虎様を休ませたいので大介さん、光虎様を背負って頂けますか?』


 大介は光虎を背負うとグラント達漁師の案内で城門に急いだ。城門では昨日クラウドに取り次いでくれた衛兵がいた。衛兵は一向を連れて謁見の間まで急いだ。


 『門番のアスラです、女神様御一行をお連れしました!』

 

 謁見の間ではクラウド含め数人がテーブルの地図を見ながら頭を抱えていた。


 『、、これは大介さん、愛さん!、、女神様はまだ休まれているのですか?、、まぁどうぞこちらへ!兄さんたちも来てくれ!』


 クラウドに招かれ大介達もテーブルを囲った。クラウドは大介と愛に上座の金の鎧を身に纏った金髪の男性が領主アランと紹介した。アランは軽く会釈をすると右脚を引き摺りながら歩くとテーブルの後ろの椅子に腰をかけた。


 『女神様御一行、よくお越し頂いた。先の戦いで手傷を負い、女神様に跪く事が相成りませぬ、、こちらにて失礼致す』


 愛が返答しようとすると、大介の背中で寝ていた光虎がパチリと目を覚まして大介から飛び降りた。


 『アラン殿。あ、貴方はまさか、、』

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