プロローグ
これは『もてない私が騎士団長に好かれているのはなぜですか?』のミシェルの両親の出逢いのエピソードです。
「お父様とお母様はどのように出逢われたのですか?」
「ふふ、どうしたの?急にそんなこと聞くなんて」
お母様は珍しく照れている。私、ミシェル・ド・ロレーヌの母、シャーロットは若い頃は社交界の華と言われとても人気があったと聞いたことがある。
若い頃はと言ってしまったが、もちろん母は今でも綺麗で可愛らしい。背の高い私とは違って、小柄なのに女性らしい体型で艶々の豊かな髪に大きな瞳を持っている。優しく柔らかい性格だが、芯がありしっかりとこの家を女主人として守っているのだ。
お母様が微笑めば、お父様は今でもメロメロだ。二人は今でも仲が良い。お父様は私を溺愛しているが、それは元はといえばお母様のことを溺愛しているから。まあ、その分心配性で少し口煩いけど。
「学校の友人達に、我が家は両親が仲良しで羨ましいって言われたのです。そういえば、お母様は恋愛結婚でしょう?」
「そうよ」
「貴族で珍しいわよね。お父様ってとても格好いいけど、お母様と年の差があるじゃない?ちょっと口煩いし……どうしてお父様だったのですか?社交界の華であるお母様なら、引くて数多だったのではありませんか」
お母様はキョトンとした後、ポッと頬を染めて黙ってしまった。するとお母様専属侍女のミラが、私達のお茶とケーキの準備をしながらくすっと笑った。
そうだ、ミラはきっと二人の恋について知っている筈だ。教えて欲しい。
「ミラは知ってるでしょう?教えてよ」
「すみません、お嬢様。奥様の大恋愛については、許可がないと私からは話せませんわ」
「大恋愛!?」
私は何がなんでも聞き出したい気持ちになった。
「ミラ、恥ずかしいわ。やめてよ」
「失礼致しました。でも、旦那様の格好良さをお嬢様にお伝えしてもよろしいのでは?」
ミラはにっこりと笑って、お母様を見つめている。
「そうね、あなたももう大人。自分の結婚相手を選ぶ年齢だものね。では長くなるけれど……私達の話をしましょうか」
お母様は優雅に紅茶を一口飲んで、美しく微笑みながら昔話をしてくれた。