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魔王メアの住まう城から遠い先、魔王シアが拠点とする城は人気がない。
それもそのはず。
城の主であるシアは単独で吸血鬼の城へ。
数少ない配下は主の捜索と統括領地へ赴いていた。
その中でたった一人。
吸血鬼の眷属から受けた傷が癒えず、動けないクロウだけが城に取り残されていた。
荒く息を吐くその顔は蒼白だった。
寝ればマシになるかと思ったが、どうやらその考えは甘かったらしい。
数多の刻印が疼き、それに呼応して激痛の波が全身を襲う。
そんな中、彼は誰に告げるでもなく無い力を駆使して言葉を発した。
クロウ「シア……っ、ほんと、は、まだ……言わなきゃ、いけないことが…あったのに……」
クロウ「…俺は、嘘をついた。奴の、キールの、狙いは、本当はメアじゃねぇ……本当の狙いは、」
クロウ「お前なんだよ、シア………」
激しい後悔と、怒り。
それ以上に己の身体を侵食していく刻印に対する恐怖で冷たくなっていった。




