84 レイ
クレイ「そうですか、そのような事が……」
クレイはシアによって魔王メアの統治領ギリギリの岩山に呼び出されていた。
シア「あぁ。すまないな、呼び出してしまって。城に近づきすぎるとメアに気づかれるからな……」
何かに没頭しているなら別なんだが、とシアは困ったように笑う。
クレイ「いえ!とんでもありません。こちらこそ兄がご迷惑をおかけしているようで……」
シア「こら。俺がクロを迷惑と思っていないことくらい知っているだろう。嫌味か?」
クレイ「…………申し訳ありません。」
シア「否定しないのか……まぁ、そんなお前がメアのそばにいてくれて俺は安心しているよ。」
クレイ「もったいなきお言葉。」
シア「では、当面はあのお転婆を外に出さないでくれ。安全を確信したら俺がそちらへ向かおう。」
クレイ「了解しました。」
シア「…ところで、最近メアはどうしている?」
クレイ「最近は、ルシアと彼女の髪色について言い争っていましたね……」
シア「…………よし、全てが終わったら詳しく聞くとしよう。」
シアは妹についてもっと聞きたかったが、やらねばならぬことがあると自分に言い聞かせて翼を広げた。
シア「では『レイ』、メアを頼んだよ。」
クレイ「はっ。」
そうして兄は、妹に付いた厄介な虫を排除すべく空へ飛んだ。
地上では『レイ』と呼ばれた青年クレイが、緊張した面持ちで見送っていた。




