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【書き直し】魔王メアの統べるところには。  作者: 紫暮りら
吸血鬼編
83/136

83 [嫌]

もう何十年も昔。


キールがメアと出会い、血に興味を示さなくなってすぐのこと。



同じようにこの食堂で、彼は食事をしていた。


「きゃっ……」


唐突に、当時はただのメイドだったナタリーがそう声を上げた。


敏感になっていた鼻は直ぐに血の匂いを告げる。


驚いて彼女の方を向くと、腕から血を流している彼女の姿が見えた。


かなり深く切ったのだろう。


キールを見て作った笑顔は、かなり無理やりだった。



…そこでキールの中に生まれたのは、嫌悪感。


その場には、血の匂いと共に嘘の香りがしていたから。


ナタリーからも。


ほかのメイドからも。


実際、食事の後尋問してわかったことだが、キールに血を飲んでもらうための演出だったことが判明した。


馬鹿馬鹿しい。


その後、嫌がらせ半分にナタリーを秘書として迎えた。


彼女は、キールの元眷属チェリーの姉だから。


…あまり、嫌がらせとしての効果はなかったようだが。



ちなみに、主人を失い『野良』となったチェリーの行方は、誰も知らない。

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