71 魔王、天使を落とす
メア「…ねぇルシアー……ほんとにまた染めちゃうの?」
すっごく綺麗な髪なのに、と魔王は残念そうな顔で聞いてくる。
ルシア「あったりまえでしょ。あんたからは綺麗に見えるかもしれないけど、私はもう白が嫌いなの。」
メア「でもー……それじゃあまつ毛も眉毛も染める気?」
ルシア「本当はやりたいけど前にやろうとしたら目にインク入って失明しかけたから…悔しいけど諦めるわ。」
メア「うん!!!それは諦めて正解だよ!!!」
魔王はルシアの伸びた髪に顔を填め幸せそうに笑う。
そんな魔王を見て、ルシアは照れたようにそっぽを向いた。
ルシア「…そんなことしてもっ!絶対に染めるんだからね!!」
メア「そんなあ〜……」
ルシア「うわっ!?ちょ、ちょっと抱きつくな!!暑苦しい!!」
メア「酷い〜〜」
ルシア「あーーもうルイ!!ルイ助けてーー!!」
ルイ「なんですか騒がしいですね、もう少し静かにしてください。ほら、魔王様も座ってください。お茶が入りましたから。」
メア「むぅ…はーい。」
ルシア「ルイはさしずめおかーさんってとこかしら…?」
ルイ「手のかかるどころか手に負えない子を産んだ覚えはありませんよ。…それでなんです?この大量の『墨』は。」
メア「むむぅ。なんだか今日のルイは冷たい気がするぞ…」
ルシア「もう一度髪を染めようと思ってね。魔王にとめられてたとこなのよ。」
ルイ「なるほど。」
メア「そうなんだ!ルイ!!ルシアってば、こんな綺麗な髪を染めるって言うんだぞ!?そんなのダメだろ!!犯罪だろ!?」
ルシア「犯罪ってなによ。どーして罪を犯したことになんのよ!」
ルイ「いいんじゃないですか?染めても。」
メア・ルシア「「え?」」
ルイ「本人が染めたいのであればその意思を尊重すべきです。止める理由はないでしょう。」
メア「そっか…うん、そうだよな……」
うんうんと頷きながらも未だ魔王は納得しきれていない様子。
ルシア「………ああ゛あ゛もうっ!!わかったわよ!!染めない!まだ染めないからその顔をやめなさいってば!!」
メア「!!ほんとか!?」
ルシア「ほんとよほんと、でも『まだ』ってだけだからね…ってくっつくな!!隙あらばくっつこうとするのやめろおおお!!!」
メア「ルシア〜〜好きだぁぁ〜〜」
ルシア「胸!胸あたって…って人の話を聞けっ!!離れろぉぉおおお!!!」
ルイ「はぁ、やれやれ。」
今日も周りが魔王様に翻弄される日常。




