6 不安の種は貴方の笑顔
何故だろう。最近我が君からの視線が痛い。
やはり、先日の私の言葉を疑われているのだろうか……
『私はいつまでも我が君の傍に。』
その言葉は本心だ。私は我が君のお傍を離れるつもりなど毛頭ない。
しかし、ルイとあれほど仲良くされているのをみると……果たしてあの方に私は必要なのかと不安になる時がある。
私がいなくても、あの方は………
「き、奇遇だな、クレイ。」
はっと視線をあげるとそこにはいつの間にか我が君の姿があった。
「どうしたっ?元気ないぞ」
咄嗟に下げた頭を、我が君が撫でる。
嗚呼、不敬であるとわかっていても、思ってしまう。
この方はまだ幼く、そして魔王である前に女性だと。
この小さな手を守りたい。
「……む?な、なな、なんだっ?手なんか握って……」
可愛らしく小首を傾げる姿は少女のそれで。
「そ、そんなに見つめられると恥ずかしいぞ………」
顔を真っ赤にして目を背ける仕草も全て。
「我が君………」
「あー!!こんな所にいたー!!魔王様ぁー!!」
「げっ………ル、ルイ、どうしてここが……!!」
「貴方がいないってことはクレイ様のところだろうと思って、聞いて回ったんですよ!!さぁ、仕事しますよ!!」
「やぁーーーだぁーーーー!!」
「やだじゃなーーーい!!」
唐突に我が君との二人の時間を邪魔され怒りが湧いたが、ルイにとってはそれが仕事なのだと考えると少しは納まったような気がした。
ならば、己にできることはただ一つ。
「我が君、お仕事頑張ってください。」
「……うん!クレイがそういってくれるなら頑張れる!!」
にっこり笑った我が君を、笑顔を守り続けたい。
彼女に仇なす者は自分が斬ると、改めて誓った。