59 ツギハギの彼ら
ルシア「まーおぅー、助けに来たよォッ!!」
黒い翼を自在に操り、毛先だけが不自然に黒い髪をなびかせた悪魔がひとり。
少し黒く濁った白い炎を操り天使の群れを焼く。
「なっ、あの炎は…まさかっ、」
「ル、ルシエル様…!?」
「なにを、ルシエル様は悪魔に堕ちたはずではっ……」
「でもあれは…」
「色は少し違うけれど…熾天使イアエル様と同じお力…!!」
ルシア「ちがうわ!あんなやつと一緒にするなぁっ!!」
そうツッコミをいれながらルシアは近場にいた天使を殴り飛ばす。
ルシア「それに私は…もう悪魔だつってんだろうがぁぁ!!!」
魔王は思った。
どうやら私は彼女を見くびっていたらしい。
たった一人の元天使により統制を崩された天使軍は、もはや偵察中の下級天使にも劣るほどだった。
メア「わたし、もっ……」
キールはその言葉に頷いた。
ユマエルには手を出せなくても、他を殺すことはできる。
そう思ってルシアの後を追う…はずだったのに。
ユマエル「…おマチください、どコへいかれるのでスか?」
雑音の減ったユマエルは感情のない声でそう訊ねる。
その手に握られた天使には不似合いの黒い剣が、真っ直ぐにメアを捉えていた。




