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【書き直し】魔王メアの統べるところには。  作者: 紫暮りら
ユマエル編
58/136

58 物好き吸血鬼は死に急ぐ

キール「大丈夫ですか姫…魔王メア様。」


メア「うん……もう、大丈夫。助けてくれてありがとうキール。」


そう言ってへにゃっと笑うメアの表情は疲れきっている。


キール「それは…全然大丈夫ではありませんね。」


メア「なんだとぉ、私の言葉が信じられないのかぁ」


弱々しく虚勢を張るメアにキールは優しく笑いかける。




メア「…わたし、彼を殺せないんだ。ううん、殺されるところを見ていることも出来ないと思う。」


見ていられないよ。


だって、彼がああなってしまったのは私のせいだもの。


キール「そうっ…おっしゃいましてもっ、」


メアを抱え、天使の放つ白い光を纏った矢を避ける。


キール「我々が殺られるのは時間の問題かと。貴方様はともかく部外者の私は確実に殺されるでしょう。」


貴方様の為に死ねるのであれば本望ですが。


と、笑って付け加える。


メアからすれば何一つ笑えない冗談だった。


これは悪魔と天使の戦い。


吸血鬼である彼はなんの関係もないのだ。






上空に漂う彼を、ユマエルを見つめる。


今の彼は私の知っている彼じゃない。


理屈ではわかっていても、心は足の取れた机のようにグラグラだ。


メア「ユ、ユマぁ……」


何を思ったか魔王は泣きながら空に手を伸ばす。


そんな中、キール一人で天使の大軍を斬り捌くのは不可能だった。

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