48 ありがとう
魔王「…モグモグ…夢ぇ?」
ルイ「魔王様、食べながら喋らないでください。」
ルシア「そ。夢。」
魔王「…ゴクン。それで、どんな夢だったの?」
ルシア「……ユマがあんたに、『いつまでもお慕いしております。』って。」
魔王「ぇ…………」
ルイ「それって…………」
ルシア「あぁ、あとあんたがドジでおっちょこちょいでどーしようもなく手のかかる主人だとも言ってたわね。」
魔王「それはうそだー!!ユマはそんなこと言わないもん!!ねぇルイ?」
ルイ「ぇっ…そう、ですね……いや、ユマならわんちゃん……」
魔王「なんのわんちゃんだよ!!」
ルイ「がふっ……」
ルシア「まぁ冗談だけど。」
魔王「冗談かい!」
魔王「…ユマ、元気だった?」
ルシア「元気もなにも彼は…」
魔王「元気そう、だった?」
ルシア「……えぇ、元気にあんたの幸せだけを願ってたわ。」
魔王「…ふっ……ぅ…っ……」
ルシア「なにっ、急に抱きついて…」
魔王はルシアの翼のある部分を触る。
魔王「ユマぁ…ごめんねぇっ…ありがとう……」
ぼろぼろと涙を零しながら崩れ落ちる魔王をルシアはしっかり受け止めた。
そんな魔王の姿を見て彼女の中には少しの罪悪感が募ったが、それよりもこれからの未来に対する覚悟の方が大きかった。
魔王をゆっくりと抱きしめ返す。
ルシアの翼が白ければ、さぞ幻想的な光景だったことだろう。
しかし彼女の翼は漆黒に濡れている。
白く戻ることは他ならぬ彼女が許さない。
(ユマ、ありがとう。私をメアと出会わせてくれて。)
私に悪魔としての時間をくれてありがとう。
『どういたしまして。』
どこからがそんな声が聞こえた気がした。




