45 燃ゆる天使は子を思う
「イアエル様、ルミエル様がお見えです。」
イアエル「そうか。通すがよい。」
「はっ。」
イアエル「…お前のところに新しい側仕えがついたようだな、ルミエル。」
ルミエル「あぁ。彼女は能天使の近くにいながら悪魔の知識は赤子並み。非常によい素材だとは思わんか?」
イアエル「そうだな…悪魔の本性をじっくり教えてやるといい。………『失楽の園』への船は、悪魔にこそある。」
ルミエル「それにしても…能天使があれほどまでに悪魔に対して無知だったとは。神も何をお考えなのやら。」
イアエル「ルミエル。今は亡き能天使いえども、もとは私の子。彼女に対する侮辱は君でも許さないよ。」
ルミエル「そうはいうがな、噂によれば能天使は神によって悪魔へと変えられてしまったそうではないか。」
イアエル「……神は、我々天使をどこへ導くおつもりなのか。彼女が天使として天界へ帰ってくるのを、父として切実に願うよ。」
ルミエル「難儀なことじゃ。我が子と会話すらしたことがないだろうに。お前はそうまでして悪魔の父親でいたいのか?」
イアエル「馬鹿なことを言う。私が悪魔の父でいたいはずがないのはわかっているだろう。…しかし、ルシアはかわいい。本当に悪魔になってしまったのなら、もう一度天使へと戻すことも不可能ではあるまい。」
ルミエル「堕ちたな、イアエルよ。そなたはそんなにあまい男ではないと思っていたがの。」
イアエル「悪魔にされたのがお前ならば切り捨てただろう。だが……我が子となると、どうやら私はあまいらしい。」
ルミエル「酷いことを言う……しかし相対した時は、」
イアエル「わかっている…迷いは今のうちに断ち切っておこう。」




