4 ちょっとこわい
「……これは一体、どういう状況ですか?」
突然の第三者の声に空気が凍った。
私の心臓も止まる。
「クレイ様!?こ、これには色々とわけが……うわぁっ」
「大丈夫ですか、我が君。」
「え?う、うん……」
(クレイに、みられた…)
今まではなんとも思っていなかった行いが急に恥ずかしくなって彼の顔を直視できない。
「ルイ、どういうつもりか説明してもらいましょうか。」
「う、いったた……ク、クレイ様誤解です!僕が魔王様を襲ったとかそういうのでは……」
「そ、そうだぞ!ルイは私の着替えを手伝ってくれていただけなのだ!決してやましいことがあるわけじゃないのだぞ!」
慌てて弁明するもクレイの表情は暗い。
「…………そうですか。」
(こえ、いつもよりひくい…)
焦る。
「な、なぁクレイ、どうしてそんな怖い顔をするんだ?私は別にどうも………」
「ルイ、出て行きなさい。今すぐ。」
「ルイ?ルイは悪くないぞ、私がさっさと着替えなかったから……」
「出て行きなさい。」
「……魔王様。」
「な、なんだ急に、いつもの様に『我が君』とは呼んではくれないのか?」
いやだ、いつもみたいに呼んで欲しい。
いつもみたいに……
「魔王様。」
「………なんだ?」
半泣きになりながら彼の黄金の瞳を見つめた。
「貴方様は危機感が足りなさすぎます。いくら魔王様がお若いといえど女性に変わりはありません。」
「わっ、私をそこらへんの女と一緒にするなっ!私は普通の女より全然、強いんだぞっ!」
私は魔王だ。
「存じ上げております。ですが……」
「わっ……」
「このように押し倒されて、直ぐに目の前の敵を殺すことが出来ますか?」
「…っ……」
どうしよう。
怒られてるのに。
心臓が、うるさい。
「無礼を、失礼致しました。ですが私がそばにいる時はともかく、いない時は何があるかわかりません。ご用心されますよう。」
ベッドから引き起こされて、ようやくはっとした。
「いやっ、いいんだ跪くなっ!………心配してくれてありがとう。」
「我が君の身を案じるのは、配下として当然のことです。」
(配下として……)
「……そう、か…」
そうだよね。
「どうかされましたか?まさかどこか痛いところでも……」
「いいやっ!違う、気にするな。」
「…左様ですか。」
「うんっ!クレイが来てくれたから今日はお仕事頑張れそうな気がする!………ところで、ルイはどこに行ったんだろう……」
「…………探してまいります。その間に、我が君は着替えを済ませておいてください。」
「わかった!頼むぞ、クレイ!」
「はっ!」
「ここにいたのですか、ルイ。」
「クレイ様!先程は……」
「これからはあのような事がないように、魔王様にはご自分で着替えるように言ってくださいね。では、私も仕事がありますので、失礼します。」
「あ、はい……ありがとう、ございました……」