表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書き直し】魔王メアの統べるところには。  作者: 紫暮りら
はじまり
22/136

22 嘘のぬくもり

「…なにしてるの?こんなところで。」


「ぅ…ぐすっ、道に、迷っちゃったの…」


とても良い香りのする少女は涙を浮かべそうつぶやく。


ここは森の奥深く。抜けると吸血鬼の城がある。

だから、吸血鬼以外のための道などあるはずもない。


ならばどうしてこの少女は迷い込んでしまったのだろう。


「ここは危ないよ。吸血鬼が住んでるんだ。」


匂いに誘われ傍によった。


こういう時、年齢の割に見た目が子供であることが、とても役に立つ。


「こわい吸血鬼?」


「そう、こわい吸血鬼。」


そもそも吸血鬼に怖いも何もあるのだろうかと思ったが、少女に疑問を抱かせないため話を合わせる。


「それなら、あなたはここでなにしてるの?」


「…僕はこの森のふもとにある村に住んでるんだ。木の実がないか探していたんだよ。」


彼女の甘い香りが、僕に嘘を重ねさせる。


「森の入口の村は吸血鬼に襲われて、今は誰もいないんじゃ…」


失敗。

てっきり収容所から逃げ出した餌かと思っていたが、ふもとの村がもうないことを知っていることから、どうやらこの子は本当の迷子のようだ。


「うん、そうだね。」


彼女の信じる事実にこれ以上嘘が混ざらないよう、肯定だけを返した。


「あなたも、ひとりなの?」


「……え?」


「あなたもひとりぼっちなの?」


予想の斜め上をいった少女の言葉は、彼女なりに僕の境遇を推測した結果だろう。


「……うん、そうだよ。僕も…ずっとひとりだ。」


嘘ではない。


そう言うと突如頭の上に小さな違和感を覚えた。


「よしよし」


「……………!?」


頭を撫でられたのは生まれて初めての経験で、こんなにも心乱されるものなのかと動揺して後ずさる。


「?嫌だった?」


「い、いや、そういうわけじゃ…」


「そっか!」


そうしてにっこり笑う彼女に涙の痕はなく。


「一緒に村まで帰ろう」


そうしてさしのべられた手は、頭を襲った違和感と同じ大きさをしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ