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「クレ…イ………」
そう一言。
一粒の涙と共に魔王メアの身体は崩れて消えた。
後に残ったのは彼女の衣服だけ。
ああ…
「あ、あ………」
なにも……
「ああ…あ………」
聞こえない。
「アアアアアアアアアアア」
目の裏にあなたの姿が浮かぶ。
何度も。
何度も。
「い、や…」
消えないで。
「やだよ……」
どうして。
頭が、痛い。
今までにはなかった感覚を知って、新しい涙が流れていく。
まだ彼女の体温で温かい服を抱きしめた。
ああ。
どこかへ行ってしまっただけだと思いたい。
けれど、現実は非情だ。
やめてよ。
わからせないで。
彼女を追わせて欲しいのに。
こんなもの、残していかないでよ…!!
震える右手で頭を抑えようとした。
けれどその手が頭に届くことはなく。
怖いほどに手に馴染んで。
安心する重みを感じる。
角に触れていた。




