131愛する人
今度こそ、間に合ったと思った。
いや、間に合わせてみせる。そうしなきゃいけないんだ。
私だったら、全てを守ることができる。
全てを引き受けることができる。
でも、引き受ける前に死んでしまったらそこまでだ。
守れるのなら。
間に合うというのなら。
私が傷つくのが一番いい!!!
私はわがままだ。
後先なんて知らない。
終わったあとのことなんて考えられないから。
あらゆるものが穏やかに映った。
己の血飛沫でさえも鮮やかに、ゆっくりと。
あぁ、ルイが何か言ってるなぁ…そんなにゆっくり話されたらわかんないよ。
呪いの鍵が、外れる音がした。
記憶が、消されていた記憶が鮮明に蘇ってくる。
私は、こんなにも大切だったことを、忘れていたのか。
悲しかったことも、苦しかったことも、それを乗り越えて好きになれた自分のことも。
死んでしまった両親のことも、救えなかった仲間のことも、その思いを継ぐという決意も。
隠されていた。ずっと。何度も。何回も。
それと同時に、死を感じた。
そっか…私は知らなかったけれど。
これが、「呪い」なのか。
お兄ちゃん………そんな顔しないで。
この呪いは、誰かが受け継がなきゃいけないものだったから。
それが私なら、よかったのに。
ほんとに、よかったのにね。
いっぱいの記憶にびっくりして、血が駆け巡る音が聞こえるみたい。
大好きなあなたの声は聞こえなくて。
でも、私の中に永遠に残ってる。
きっと今頃、怒ってるよね。
言うこと聞けなくて、ごめんね。
大好きだよ。
絶対に忘れたりなんかしないよ。
愛しています。
「クレ…イ………」
そう一言。
一粒の涙と共に魔王メアの身体は崩れて消えた。




