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「あにうえ、だめぇえええええーーー!!!!!」
突然聞こえた窓の割れる音と、怒号。
何も考えずに、うるさいほうを消そうとした。
くすんだ瞳に、妹は写っていなかった。
サッサッサッ、と3回。
肉を切り分けるように三角形を描いた。
噴水のように溢れた赤い彼女を見て思った。
…なんて、美しいんだろうと──
つつ…と涙が伝った。
あぁ、でもこれはきっと俺のじゃない。
呪われてしまった俺の心にはもう、誰も映らない。
いや、きっと、それよりも前から。
だから、ほら。
必死に手を伸ばしたのに片手間に兄に切られて絶望する妹を見ても。
俺はもう何も感じないんだ。
ああ、彼女が泣いている。
今幸せじゃないんだな。
だったらどう書き換えれば幸せになるのかな。
なんてこと。
そんなことをずっと夢想してる。
やっぱり、生まれた時から。
俺には心なんてなかったんだ。




