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キール「魔王シアの幹部、ヨハンとジーノ。」
キールがそう問いかけると、2人はすこし驚いたように目を開ける。
キール「あなた達と遊ぶ時間はありません。大人しくそこをどいてください。」
ジーノ「我々は魔王シア様に使える身だ。主の敵を前にして引き下がると思ったか!」
ルシア「.......敵。敵か。なんで?」
ルシアは自分の中にモヤが生まれるのを感じた。
だって私たちはメアの本当の記憶を取り戻したいだけだ。
取り戻せなくても、これ以上彼女が壊されていくのを見過ごせないだけだ。
ジーノ「はぁっ?」
ルシア「…どうして私たちを敵と思うの?」
真っ黒い翼を広げてルシアは問う。
ヨハン「…天使は総じて悪魔の敵。殲滅が道理。ルイ、お前が異常。」
ルイ「.......私は異常ではありません。正常…」
ヨハン「じゃあ、狂ったの?」
ヨハンはコテンと首を傾げて問いかけた。
それは彼にとっての疑問。理解できない事だったから。
狂ったとしか考えられなかったから。
たとえルイを見る瞳に侮蔑が混じっていたとしても…
少なくとも本人は、悪意ある質問のつもりはなかったのだ。
ほんの数秒の沈黙、ルイの絶望の表情とキールの嫌悪の眼差し。
それを遮るように、ヨハンの首が宙を舞った。
そして暗い炎に包まれたヨハンは灰と化す。
ジーノ「………ヨハ、ン……」
嗚呼、聞こえる。
獲物(もう一匹)がヒュッと喉を鳴らす音が。
炎の剣を構えたルシアは動揺を隠せないジーノに向き直った。
ルシア「次は…お前の番。」




