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121もう1人の王
「ん……」
何かの気配を感じた魔王はちらりと窓の外に目を見やった。
空は快晴、暑くもなく寒くもない心地よい風が野の草花を揺らしている。
男は右の掌を見た。そこには何も無い。
「…かならず、」
左手を心臓の上にかざし、強く拳を握る。
「メアを、幸せにしなければ……」
シアはもうこれで何度目かわからぬ決意を口にする。
『妹を、幸せに。』
そうしなければならない義務がある。
兄として、家族として、
親を殺してしまった責任として。
「…メア、お前はお兄ちゃんが護るから。だから、なぁ…っ」
どうか、永遠に幸福の中に。




