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ルイ「もう一度詳しく説明してください、ルシア。魔王様がシア様に洗脳されているとは一体どういうことですか。」
ルシア「…私じゃなくてキールに聞いた方が早いわ。でしょ、キール?」
キール「えぇ。」
ルイ「……聞かせてください。」
キール「メアの兄である魔王シアには沢山の逸話があった。それも彼がこの世に誕生した時からの。」
ルイ「…産まれた時からの逸話、ですか。」
ルシア「信じられないわね…」
キール「しかしそれは吸血鬼である私の耳にも届く程度のもの。周りに知られても問題は無いと前王が判断したからでしょう。…けれど彼の秘密はそれだけではなかった。」
ルイ「というのは?」
キール「今だからこそ全魔王だけには知らされているシアの力。総称としての名はわからないが、言うなれば『記憶の改変』だ。」
ルイ「記憶の……改変。」
キール「シアはメアに対しその力を使い続けている。少なくとも私とメアが初めて出会った時からは。……その証拠に、100年後再びであったメアは私のことを覚えてはいなかった。」
ルイ「……忘れたという可能性は…」
キール「ははっ、あの光景を彼女が忘れられるとは思わないが。」
ルイ「そう…ですか……」
キール「その記憶はきっと、メアにとって忘れてしまう方がいいものだったと私でも思う。…しかしあの男は彼女に痛みを教えない。苦しみを、全てなかったことにしているんだ!!メアが乗り切ったはずの過去も、決意や覚悟も全て!!!…あの男は自分の思い通りに変えていく………そんなのは許せない。」
ルシア「…メアだけじゃない。きっと、この城に住む人達全員にその力は使われているわ。」
ルイ「僕、にも……」
ルシア「あの会議が終わったあと違和感を感じなかったでしょ?」
ルイ「違和感って、何の?」
ルシア「…メアよ。」




