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【書き直し】魔王メアの統べるところには。  作者: 紫暮りら
ロイヤル編
109/136

109

リキ「おっ、おいルシア……」


心配そうな声に我に返った。


リキ「みんな見てる…」



「少しよろしいですか。」


振り返ると、白い制服に身を包んだ集団があった。


声をかけてきた男はそのリーダーだろうか。


(…宙の、匂い。)


どこか懐かしい香りがする。


でも今は不快な香り。



「貴方は…人族ではありませんよね。種族名をお聞きしてもよろしいですか?」


ルシア「……聞いてどうするの?人間じゃない私を殺す?追い出す?出ていけというのなら出ていくけれど、私を殺すのは辞めておいた方がいいわ。」


「いいえ、そのようなことは致しません。」


ルシア「…じゃあ、何故?」


「私の天声が、そうするようにと。」



天声。


その言葉には思い当たる節がある。


神のお告げを下位、大天使を通じて賜る人間の存在を。






「私の天声は、貴方様の本質を天使であると告げています。」


ルシア「っ………」


唇を噛んだ。


きつく、きつく。


血が滲み出るくらい。


「…ですが今は悪魔だとも。」


その時、その人間の表情が歪んだのを見た。


悪魔を憎む、人の表情。


ルシア「……そう。じゃあその天声とやらに伝えなさい。私は悪魔に成れて心から幸せだと。もういくわよ、リキ。」


リキ「あっ、あぁ…」


後ろは見ない。


あんな奴らに構っていられるほど私の心に余裕なんてなかった。




「そうですか……それが貴方の答えなのですね……」


悪の香りの残った通りで男は呟く。


「どうなさいますか?大天使様。」


そうして、頭上を見上げた。


『…そうだな。今は放置してもよい。彼の者はもう翼を持たぬ。何も出来まい。』


可愛らしくも威厳ある声が、男に降り注ぐ。


『だが最後の言葉……「悪魔に成れて心から幸せ」だと………?その…そのようなことをこの私の前で口にしたこと…いずれ後悔させてやる。』


声の主、頭上の主はとても怒っていた。


その事に男は不敬と知りながら幸福を感じてしまう。


此方の命を聞くのは自分だと。


此方が命を下すのは己だけだと。


『ヘンネル』


「はい。我が天声の意向のままに。」


そうして男は微笑み、己がヘンネルであることに感謝を捧げ歩き出した。

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