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ルシア「…ん、ぅ……」
リキ「起きたか。」
ルシア「……うん。おはようリキ。」
目を開けるとそこは知らない空間。
寝ている間に誰かに運ばれたなど信じられなかったが、それだけストレスが溜まっていたということなのか。
溢れ出るあくびを噛んだ。
ルシア「…あのね…リキ。」
リキ「うん。」
伝えなければ。
ルシア「その、あなたの忘れてしまった…人のこと。」
リキ「うん。」
ルシア「…………ごめんなさい。やっぱり、私からは言えない。」
リキ「……………………そっか。」
ルシア「本当にごめんなさい…」
リキ「名前を聞くことも?」
ルシア「………あなたは、その人の名前を忘れてしまう前から知らないの。」
リキ「…そか。」
心が沈む。
私は何をしにここへ来たのだろう。
悲しませたいわけじゃなかったのに。
これじゃあ振り出しに戻るどころか、心はどこか遠くへ行ってしまう。
…なのにどうして、
リキ「別にいいさ。仕方ない。そう、仕方の無いことなんだ。」
あなたは笑えるの?
リキ「ありがとう、ルシア。俺、諦めないよ。とても大切な人なんだ。一生をかけても探すさ。」
そう言って泣きそうな顔で笑ったリキを、私は二度と忘れられないだろう。
リキ「……そうだ。今日は大きな街へ降りる予定なんだ。ルシアも一緒に行く?」
ルシア「…うん。」
うん。
私も行く。
知りたい。
あなたのその心の強さを。
直ぐに誰かに寄りかかってしまう私の弱さを。
消し去りたい。




