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【書き直し】魔王メアの統べるところには。  作者: 紫暮りら
ロイヤル編
106/136

106

ルシア「久しぶりね。」


懐かしい悪魔がやってきた。


でも、心の底で望んでいた人物とは違う。


もう俺はそれが誰だったか思い出せない。


「…そうか?お前達悪魔の基準じゃ久しぶりじゃないんじゃなかったか。」


思わず嫌味が口をついて出た。


別に会いたくなかったわけじゃない。


むしろ会いたかった。


もう一度会って、この心に空いた穴の意味を知りたかった。


ルシア「そうだったかしら。……忘れたわ。」


そう言って彼女は悲しそうに微笑んだ。


その時、彼女は世界一美しい天使のように見えた。


思わず、涙が零れてしまうほどに。


ルシア「…どうしたの?」


きっと、彼女はわかっているんだ。


俺の悲しみを。


俺の虚しさを。


「……あの時から、ずっと…ずっと考えてたんだ。ずっとずっと誰かが来るのを待っているんだ。それが誰だかわからないんだ…」


ルシア「うん。」


「なぁ、教えてくれよ。俺は、一体…誰を忘れてしまったんだっ……?」


大切な人だったはずなんだ。


だってこんなにも心が苦しい。


きっと俺のせいなんだ。


俺の弱さが、その人を忘れさせた。


「………俺が、もっと強ければ…」


俺にもっと力があれば。


俺が、ただの人間じゃなければ。


……俺が悪魔であれば。


変えることのできないイフを恨んで泣いた。


ルシア「それ以上はだめよ。」


突然、ふわりと悪魔に抱きしめられた。


けれど溢れる涙は止まらない。


なにがだめだというのか。


ルシア「貴方は人であったから彼女に会うことが出来たの。それは私も同じ。私も……元天使でなければ彼女と出会うことはなかったかもしれない。」


ルシア「今は頭をからにしなさい。でないと……神に目をつけられるわ。」


そう言って俺の頭を撫でる。


神………神か……神なら、俺をその人と同じに…してくれるだろう、か……


ルシア「……おやすみ、リキ。今はゆっくり休んで。間違っても、神になんて祈らないで。」

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