104 後日譚
『結局、その後この城での生活に大きな変化が起こることは無かった。魔王シアの話題は禁句、ルイは魔王に甘くなったように思うが、それだけ。魔王という枷に囚われない魔王は自由を満喫して今日も笑っている。嫌なことは忘れて、幸せだけを求めて。』
『…苦しみを一緒に乗り越えてきた魔王はどこへ行ってしまったのだろうか。もう、戻ってはこないのだろうか。今の彼女は逃げてばかり。』
『魔王が元に戻った。なのに変だ、全然嬉しくない。一体会議で何があったのだろう。あれだけ避け続けていた魔王シアと幸せそうに会話をしていた。私が知らない魔王だ、気持ちが悪い。』
『全てが元に戻った。最近はよく魔王シアが遊びに来る。ルイもクレイもキールですらいつも通りだ。いつも通りに馴染んでいる。私だけ。私だけが今についていけていない。私だけが過去にいるんだ。どうして。』
『近頃、頭痛が酷い。頭蓋骨が割れるようだ。痛くて痛くて夜も眠れない。心配させないようにしないと。』
『痛みで自分が何を言っているのかわからない。変なことを言っていなければいいけれど。この日記だけは書き続けなければならない。私はおかしくないんだって、思いたい。』
『「忘れっぽい」という称号を新たに得た魔王は、幸せしか覚えてはいなかった。』




