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ルシア「それで?なーんで現魔王のメアが覚えてないのよ。」
メア「…ぅっ……うぅ〜〜、なんかわかんないけど………思い出せなかった…」
なおも追求しようとするルシアに、キールが「それよりも、」と遮る。
キール「魔王シアをどうするんだい?これから。」
メア「……兄上…別人みたいだった。私、あんな兄上見たことないよ…」
ルイ「魔王様……」
キール「…あと、僕のことも。」
脱線した話をそのままにして忘れ去ることの多い魔王とその側近たちは、とてもいい人材を手に入れたようだ。
ルイ「…そうっ、そうですよ魔王様、この男の処遇を考えなければなりません!!」
メア「え?みんなと同じでいいんじゃないか?」
ルイ「貴方はまた呑気なことを………」
頭上に花を咲かせた魔王は「のんき???」と反復している。
ルイ「…5つある魔の国が何故、大規模な戦争に陥ったことがないのか考えたことはありませんか?……まぁ、ルシアが来たゴタゴタもあって前回の定例会議をおサボりした魔王様は忘れていたかもしれませんが…」
ルシア「それって私のせいなの??」
ルイ「いいえ?ルシアを理由にした魔王様の責任です。」
メア「私のせいなの!?」
ルイ「そうですよ、それしかないでしょう!」
メア「はぃぃ………」
ルイ「……とーにーかーくっ、5つの魔の国がここまで続いてこられたのは、シア様が魔王として即位され、この国と兄妹国という文字通り不可侵の条約を結ばれたからです。シア様は魔王となる前から有名でしたし。それでどの国も手だしができなかった。」
キール「でも、状況が変わったわけだ。魔王メアは天使、それも中位の能天使と吸血鬼の王を手に入れてしまった。」
メア「て、手に入れたなんてそんな……」
キール「ふふっ、わかってるよ。貴方がそんなふうに思っていないことは。でも、周りの国から見たらどうだろう?魔の地の真ん中にある国は、仲の悪かった種族と協定を結んだように見えるんじゃないかな?」
メア「ぁ……」
キール「それに、今のまま北の国と繋がりを保つのは……難しいんじゃないかな。」
メア「ぅ……」
ぐぅのねも出ない。
ルイ「とにかく、次の会議には必ず出席するようにしてくださいね。いいですか?」
魔王「はい…」




