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3/3

忌み子3



神宮院家の中庭で、俺と夏希は対峙する。

ここに来た時も思ったが、ここんちめっちゃ広い。

本家はほぼ城だし中庭も一種のグラウンドくらいある。

外からは城もこの広さも見えなかったが、何かの結界だろうか。

普段道を歩いていても気にしない民家が立ち並ぶこの一帯が全て神宮院家の土地なのだろう。


「本当に良いのだな?冬夜よ。」

「はい、トキ様。」


心配そうに婆ちゃんは顔色を窺ってくる。

他の連中は遠巻きに俺らを見ているが、皆一様に俺を見て下卑た視線で嘲笑っているようだ。


「夏希、冬夜。両者の決闘をここに認め、始めるとするッッ!!」


婆ちゃんの一言で、夏希が胸ポケットから取り出した形代を地面に投げつけた。


「お前はここで終わりだ!!!!出でよ!!我が式神!!!」


印を結び、気を流す。

奔流する紅い気は魔力の様に夏希の周りを渦巻く。

傍目からは炎の様にも見える膨大な気。

おぉ、これが!というギャラリーの感嘆の声も聞こえてくる。

神宮院家本家の者だとしても、夏希の式神を見た事がある者は少ないのだろう。


そんな事を考えているうちに姿を現したのは、巨大な鬼。

まるで牡鹿の様な立派な双角に、鋭く伸びた二本の牙。

蒼い肌は筋骨隆々で逞しく、三メートルはあるであろう巨躯が俺を見下ろしていた。


「敵を駆逐せよ!!蒼鬼!!!」


風の噂で聞くには、『伝説の鬼』らしい。

よくわからんが、見物人達のボルテージも最高潮だ。


「あの忌み子もこれで終わりだ!!」

「おぉ!!あれが噂の!」

「さすがは晴彦様のご子息!!」


そんな歓声を背に、忌み子たる俺に振り下ろされる拳を片手で止めて見せた。

掌には魔方陣の描かれた障壁。

轟音と衝撃波が中庭を襲う。


多くの有象無象ともとれる一派たちはその衝撃で吹き飛び、腰を抜かし、目を白黒させる。

何が起きたのか全く分からないと。

夏希もその一人だ。

しかし、本家の重鎮たる者たちは身じろぎ一つせず俺を見据えていた。

婆ちゃんも、父上も。


場に残ったのは俺と蒼鬼。

突き刺さる視線を一瞥してから、一呼吸置く。


一瞬間は空いたものの、駆逐せよと命じられた蒼鬼の連撃が襲ってくる。

その全てを障壁でいなし、終いには腕を使わず障壁だけで防いで見せた。


さすがの蒼鬼も埒が明かないと思ったのか、攻撃を止めて掌を組む。

蒼き気が、炎が彼の身体を覆っていく。

恐らく必殺技の類が繰り出されるのだろう。


「トキ様、父上、この場にいる皆様。僕の力の1%を出します。」


そう宣言した俺は距離をとる。

蒼鬼は大口を開け、蒼炎の槍を吐き出した。

その槍は空気を焼き、地面を焦がしながら俺に迫る。

生身で喰らってしまえばひとたまりもない。

距離をとったことによって、彼らの目にはそれが顕著に映っている筈だ。


俺は風の渦を両掌で形成し、槍を絡めとって蒼鬼に返す。

この槍は蒼鬼の技。

眼前で巨大な掌で防がれた。


しかしそれが狙いだ。

霧散した蒼炎の槍を目くらましに、空を駆けて蒼鬼を殴る。

衝撃で態勢を崩した蒼鬼の鳩尾に前蹴り。

屈んだ後頭部に回転浴びせ蹴り。


この一連の攻撃は「身体強化」。

れっきとした魔法だ。


ズシンと沈んだ蒼鬼は動かなくなり、消滅した。


「ざっと、こんなもんかな。」


着地した俺は、手についたであろう埃をパンパンと払った。




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