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忌み子



「またここか...。」


慣れたもんだと思う。

真っ白な空間に、真っ白な椅子がポツンと置かれている。

この空間を俺は知っている。

何度も何度も来た場所だ。

俺が勇者を終えた時、賢者を終えた時、聖者を終えた時、王様を終えた時、魔王を終えた時、人を終えた時。

寿命を終える度にここへ来ている。


「おい、早く済ませてくれ。」


何も無い空間に話しかけ、椅子に座る。


「お早いお帰りですねっ!ヒロトさんっ!あ、今の名前はグウェインさんでしたっけ?」


純白の天使の様な金髪碧眼の少女がどこからか現れ、てへぺろとおちゃらけた。


「名前は別になんでもいい。まぁお前にとっては早いんだろうな。80年は。」

「そんなことないですよぉ?割と暇ですしっ!」

「神が暇なわけねーだろ!」


思わず突っ込んでしまったが彼女は幾多の世界を管理する女神。

その(しもべ)として俺は動いている。

関係上は彼女の部下だ。


「で、今度は何をどうするんだ?」


ついに暇すぎてゲームを取り出した女神に尋ねる。


「次は現代ですよ。」

「は?」

「現代ですっ!」

「現代ってあの?」

「あの現代です!元いた世界ですよっ!」

「え、マジ?」


あまりの衝撃に目眩がした。

現代、つまり俺が元々居た世界という事だ。

魔法も何も無い、科学が発展した世界。


「ステータスはこっちでいじっとくんで、行ってらっしゃいです!!」

「えっ、ちょ、待っ」


久方ぶりの世界に胸を踊らせつつも何も説明されない事に不安を覚えながら、意識を手放した。









「そんな事もあったなぁ...。」


縁側でちょこんと座り、お茶を飲む金髪の少年が呟く。

肌は白く透き通り、体格も五歳といえど頼りない。

春の日差しがぽかぽかと心地良い。


俺はたった今、「神宮院(じんぐういん) 冬夜(とうや)」としてちょうど五歳になった。

転生前の記憶がドッと流れ込んできた時は驚いたが、今は落ち着いている。


「しかし、めんどくさい事になってるな。」


神宮院家は日本に現存する陰陽師の一族の一つ。

その中でも冬夜は分家の四男に位置する。

父親が一般人の母と結ばれたのが分家たる所以だ。


そしてもっと問題なのが、冬夜が「忌み子」として扱われている事。

忌み子は、その溢れ出る魂の香りで魑魅魍魎共を誘い寄せてしまう。

そのせいで冬夜は生まれた頃から家族と別れ、この結界の張られた別邸で一人の使用人と共に暮らすハメになっている。

家族と仲が悪い訳では無いが、本家の決定により一年に一度の面会しか許されていない。


それが、今日。


「この俺が忌み子で分家の四男。最悪のスタートだな。」


愚痴を零しながらお茶を飲み干したタイミングで、廊下を小走りする音が近づいてきた。


「冬夜様!お父様がお見えになられましたよ!!!」

「そう大きな声で言わなくても聞こえますよ、花江さん。」

「す、すみません!!」


姿を現したのは割烹着の黒髪美人。

冬夜と共に暮らしている使用人の花江さんだ。

長い髪をポニーテールにしていて、とても可愛らしい。


(俺が五歳児じゃなければ狙っているのに。)


ちなみに名前を呼んだのもちゃんと話をしたのも、今が初めてだ。

冬夜はどうも人見知りだったらしい。

俺自身はとうの昔にそんか感覚置いてきたが。

動揺しているせいか、花江さんは顔を紅く染めながら平謝りをしている。


「案内してください。」

「は、はいっ!!」


顔を上げた花江さんに玄関まで着いていく。

するとそこには、一年ぶりの父親が仁王立ちしていた。



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