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第二回小説家になろうラジオ大賞 投稿作品

うちの僧侶が聖女過ぎて困る

作者: 衣谷強

なろうラジオ大賞2第十弾。……第十弾!?

下手な鉄砲でもここまで撃てば何かに当たるのでは無いかと期待してます。迷惑な弾を撒き散らしているだけだったらごめんなさい。

お目汚しかもしれませんが、お楽しみいただけたら幸いです。

「食らえ!」

 ぎゃあ!


 魔物は悲鳴を上げて倒れた。ふぅ、手強い奴だった。


「勇者様、大丈夫ですか?」

「あぁ。僧侶は?」

「勇者様が守ってくださいましたから」


 僧侶が駆け寄って、回復魔法をかけてくれる。あぁ痛みが和らぐ。


 ぎ、ぎ……。

「あ!」

「まだ生きてるな」


 トドメを刺そうとする俺を、


「だめです!」


 僧侶が押し留める。


「この子はもう戦えません! 森に返せばもう戦う必要もありません!」

「うーん」


 退治した方が安心だとは思うんだけど、涙目で訴えられると押し切れない。


「……分かったよ」

「ありがとうございます!」


 僧侶は回復魔法をかけて魔物を森へと放す。


「僧侶は優しいな」

「……命が終わるのが怖いだけです」

「それを優しいって言うんだよ」


 俯く僧侶の頭を撫でる。


「えへへ……」


 くすぐったそうに笑う僧侶。正に聖女だ。俺はこの笑顔を守るために戦おう。




「魔王、決着を着けよう」

「異存は無い。だが」


 玉座の間。魔王は剣を合わせたまま、小声で答える魔王の視線の先に僧侶。言いたい事は伝わる。


「あれ無しでやれないか?」

「無理なんだ。そうすると凄く辛い感じで泣かれる」

「だがこれでは」


 そう、決着が着かない。俺が傷付けば僧侶が回復してくれる。だが魔王を追い詰めれば、やはり僧侶は回復してしまう。


「……もう半日だ。そろそろ魔力が尽きるのでは無いか?」

「……僧侶の魔力、底無しなんだ。これまでの旅で、魔力切れは一度もない」

「……真か……」


 げんなりする魔王。半日も戦っては回復させられてはそんな顔にもなる。


「勇者、これまでの旅もずっとこうだったのか?」

「……あぁ……」

「それは、何と言うか、大変であったな……」


 そうだよ。大変だったんだよ。僧侶が無限に回復するもんだから、毎回相手が降参する迄戦わされて。でもまさか魔王に同情される日が来るとは思わなかった。あ、やばい、泣きそう。


「頑張ってください勇者様ー!」

「……だそうだが、どうする、勇者よ」

「……どうするって、なぁ」


 回復されるとは言え、傷を受ければ当然痛い。半日も痛みにさらされ続けたら嫌になってくる。


「……やめない? 戦い」

「……やぶさかではない」


 溜息と共に俺達は剣を納めた。


「勇者様、魔王と和解できたんですか!? 流石勇者様です!」

「は、はは……」


 無邪気に微笑む僧侶。それは旅立ちの時と同じ聖女の微笑み。

 こうして魔王討伐の旅は、死傷者0で幕を閉じた。俺と魔王と、幾多の魔物の心に深い爪痕を残して……。

読了ありがとうございました。

敵も味方も死傷者0の完全なるハッピーエンドです。勇者のメンタルオリハルコン。

最近は敵を倒しても罪悪感を感じる主人公がいるので、こういうクレイジーでダイヤモンドな相方が居たらどうなるのかなと書いてみました。結論としては、死が終わりじゃないならもう絶望するしかないじゃない。

ではまた次回作でお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔物にも人にも死者が出ることなく争いが終わったところ、でしょうか(心の深い爪痕から目を反らしつつ) [気になる点] 敵の筈の僧侶から回復されるというゴールドなエクスペリエンスをした魔王様、…
[良い点]  企画読みから来ました。  無限回復地獄ですね。とても面白いと感じました。 [一言]  読ませて頂きありがとうございました
[良い点] はじめまして!「なろうラジオ大賞2」作品を読んでいてこちらに辿り着きました! めちゃくちゃ面白かったですっっ 聖女様、すごいっ!(笑) 勇者様、あんたイイ奴だ!
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