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つよい(小並感)


骸骨はただの骸骨ではなく、ネクロマンサーさん的な骸骨だったみたいだ。

ソアラの接近に気づいたそれが杖を構えると、それに呼応するように地面が盛り上がりそこから複数のアンデッドが這い出てくる。


少し後ろから確認した限りでは、廃墟の中で見た覚えのあるものばかりだ。


「ソアラ、いける!?」

「……あぁ、問題はない。先ほどまでと同じように頼む」


アンデッドが増えたのにもかかわらず、前に進む足を止めないソアラに一つ声をかける。

すると彼は先ほどまで、つまりは道中と同じようにサポートをしろと言った。

ソアラは剣の扱いがうまい。

だから大概の敵は放っておいても一人で何とかしてくれる。


だけど、そんなソアラにも苦手な相手というものは存在する。

例を挙げるならアンデッドの中でも肉体を持たない霊体系、または遠距離から攻撃してきて近づかない魔法使い系の敵だ。

ここまで来るのにそういった手合いは何度か相手をした。

それで出た結論として、霊体系と魔法使い系の魔物は優先的に浄化することになっているのだ。


そんなわけで、僕はソアラが一番面倒だと言っていた霊体系の魔物から浄化を開始する。

霊体系の魔物は実態がないから物理攻撃が効かない。

そのくせして接触するとダメージを受ける仕様になっているのだ。

しかし、その特異性の代償としてか体力が少ない。


低位の霊体系の魔物ならスキルポイントを割り振る前の僕でも一撃で倒せたくらいだ。

今、ソアラの周りにはそれなりに強い霊体系の魔物であるブラッドクラウドという赤黒でガス状の見た目をした魔物が浮いている。

僕はそこに向けて『生命回帰』を放った。


キィィィィィィ


という断末魔がソアラの周りから響き渡る。

これはブラッドクラウドが消滅した際のサインだ。

近くに同種の魔物がいたら寄ってくるため、アラート的なものでもある。


「次は、魔法使い系!! 『生命の抱擁』!!」

『生命の抱擁』は『信仰魔法:慈母神Ⅱ』にて習得できる魔法スキルだ。その効果は対象のHPの大回復。

残念ながら『生命回帰』と違いアンデッド特攻は持っていないけど、『浄化Ⅰ』のスキルがあるため通常なら回復量の10%しかダメージが入らないところを、15%もダメージが入るようになっている。

圧倒的な回復力を持つこの魔法は、ネクロマンサー骸骨の横に控えて呪文を唱えていたスケルトンウィザードを倒すことはできなかったけど、確かなダメージを与えることに成功した。


「これだけダメージが入るなら、ブラッドクラウドに抱擁のほうを撃てばよかったね。それはともかく、ソアラ、受け取って!!」


僕は僕が霊体系と魔法使い系を浄化する間にずっと一人で前線を支え続けているソアラに対して、『力の加護』を与える。

僕が今まで見てきた限り、ソアラは近接攻撃しかしてこない相手には被弾しない。

そのため、『癒しの加護』や『守護の加護』よりかは攻撃力を上げて少しでもアンデッドの処理速度を向上させる『力の加護』がよいと思ったのだ。


どうやら、加護系の魔法は一度に着けられるのは一つだけみたいだからどの加護を与えるのかの選択は割と重要だ。

「……助かる。それとレティ、足元に気をつけろ」

「へ? うわぁ!!」


お礼の言葉とともに告げられた忠告通り、ちらりと足元を見ると少し盛り上がっていた。

これはここからアンデッドが沸きますよというサインだ。

僕がその場から飛びのくと、盛り上がった地面から鎧の腕が出てきた。

赤色の鎧だった。

これはリビングアーマーの上位種のヘルアーマーの腕だったと記憶している。


僕はとっさにその腕に対して『ヒール』をかける。

しかし、『ヒール』はそれほど効果を及ぼさなかった。

普通に効いているとは思うが、ダメージに対してヘルアーマーの体力が多すぎるのだ。このままでは、地面から這い出てきたこいつにやられてしまう。

僕は今、再使用が可能になった『生命回帰』を素早くヘルアーマーに放つ。

そいつはもう、上半身が全部見えるくらいには地面から出ていた。

『生命の抱擁』はまだ再使用可能になるまで時間がかかるから、これで倒しきらないと割とやばいんだけど、ヘルアーマーが倒れる様子はない。


「…レティ、こっちに走ってこい!」

どうするのがよいかと僕が逡巡していると、ソアラが声を上げる。

僕は即座にそれに従った。

体力がまだ6割以上は残っているであろうヘルアーマーを無視して、僕はソアラのもとへと駆けた。

ソアラの周りには先ほど僕が逃げたヘルアーマーを含めたアンデッドが多数いて、どう考えてもそちらの方が危険に見える。

だけど、僕はソアラの実力を信じている。

彼はそれができるから、僕を呼んだのだ。


ある程度ソアラに近づくと、それまでソアラにくぎ付けだったアンデッドたちの一部が僕の方を向いた。

だが、ソアラから意識をそらしたアンデッドは一様に切り裂かれていく。

そこには、道中でアンデッド相手には相性が悪いと言っていた彼の姿はどこにもなく、まさしく魔を祓う聖騎士の姿があった。


よく見ると、ソアラの剣が光り輝いている。


「ソアラ、それは!?」

「……破邪のスキルだ。一定時間だけだが、魔の者に対する特攻を得られるらしい。燃費が悪いから多用はできないけどな。それよりレティ、もっとそばに寄れ」

「ん、わかった」


ソアラも先ほどの休憩時間でアンデッドに有利になるスキルをいくつか取得していたらしく、その一つをここで見せてくれた。

破邪のスキルは強力で、先ほどまでは一体倒すのにも時間がかかっていたアンデッドたちが半分以下の時間で倒れていく。

僕はソアラの横から、こちらを狙っていたスケルトンウィザードのような魔法使い系のアンデッドを回復――浄化していく。


「くぅ、ソアラ、予想はしていたけどやっぱりあのボスのネクロマンサーには『癒しの加護』は効果がなかった」


隙を見てアンデッドを倒すたびに補充してくるネクロマンサーに僕は『癒しの加護』を与えようとした。

しかし、何やら波動のようなものが出て防がれてしまった。

『癒しの加護』が有効なら、耐えているだけで勝てたんだけど、そこまで甘くはなかったみたいだ。


「……そうか。ならレティ、範囲回復は持っているか?」

「ごめん。持ってないけど、どうして?」

「……さっきから呼び出されるアンデッドの数が20を超えることがない。だからすべてを同時に倒し、次が沸くまでにあいつを倒そうと思ったのだが」

「あ、それなら僕に手があるよ。ねぇソアラ、君は防御だけで僕を守り続けることはできるかな?」

「……無論、余裕だ。今は上限の20体、全て近接のみ。何時間でも何日でも守り続けてやるさ」

「おぉ、格好いいね。なら、任せたよ」


僕はそう言って『生命結界』の魔法を発動させた。

『生命結界』は自分を起点にして周囲10mに体力を自動回復させる結界を張る魔法だ。

この魔法の欠点は結界内の全ての存在を回復させてしまうことだけど、今回の相手は回復がダメージになるアンデッド。

使い渋る必要はなかった。

また、『生命結界』の回復量は僕のMND……ではなく結界内にいる存在の最大HP依存で回復量が決まる。

そのため、全てのアンデッドはこの結界内では同じ割合でダメージを受ける……のだけど


「やっぱり、割合系の回復効果はボス系のアンデッドには効果がないのかも」


『癒しの加護』が弾かれたことからも予想はできていたけど、ネクロマンサーには効果がなかった。

それは予想ができていたことだし、作戦的には問題ないからいいけどね。

さて、『生命結界』を張ってその維持の間ソアラに守られている僕だけど、まだ仕事はある。


それはHPの調整だ。

この作戦を決行する前、ソアラの反撃を受けたアンデッドは多少体力が減っている。

そうして減っている体力に合わせるように、他のアンデッドの体力を削るのだ。


このゲームは敵のHPバーが誰にも彼にも見えるわけではない。

HP残量を確認するにはそれ用のスキルが必要になってくる。

だけど、僕たちは今それを持っていない。だからこれからは僕の感覚が頼りだ。


後、どのくらいで天に召されそうかという漠然とした感覚だけでHP調整を施すのだ。

そして、その手段だが詠唱が必要ない、微量しか回復しない『プチヒール』が適任だった。

ダメージが少ないのが今回は功を奏しているというわけだ。


そうして何となくではあるが、敵のHPを調整しつつ、僕たちはその時を待った。

今更ではあるが、アンデッド系の魔物は見た目が怖い。

動く鎧とかはそうでもないが、腐り爛れた顔で迫ってくるゾンビや、そもそも肉がないスケルトンとかは普通に怖い。

そんな怖い存在が、僕の周りを取り囲んで迫ってくるのだからいくらソアラが守ってくれているとはいえ怖かった。

僕は必死に恐怖を押し殺しながら、敵のHPをちまちまと調整した。


そして、ついにその時が来た。

「一体倒れた!! ソアラッ!!」

「……承知した」


僕たちに襲い掛かってきていたゾンビ系が一体、『生命結界』の効果で浄化されたのだ。

それを確認した僕たちの行動は早かった。


僕は『生命回帰』の準備をし、ソアラは周りのアンデッドたちを素早く切り裂いていった。

一体倒れたということは、他のアンデッドたちももう限界が近いということで、ソアラの攻撃でも一撃で倒すことができた。

そして、僕たちの視界がようやく開かれる。

僕はその瞬間に『生命回帰』をネクロマンサーへ、これは『癒しの加護』や『生命結界』と違って確かに効果を与えたみたいで、ネクロマンサーが忌々し気にこちらを見た。


ソアラも、周りのアンデッドを倒し終わった後、ここまで温存しておいた破邪のスキルを使用してネクロマンサーへと切りかかり、息もつかせぬ連撃を加えた。

だけど、ボスだからか体力が多い。


僕たちの攻撃では倒しきれなかったみたいだ。


だけど、アンデッドの再構築には時間がかかる。

その間に僕の追撃の『生命の抱擁』が直撃、ネクロマンサーは苦しそうに身を震わせる。

だけど、向こうもただやられるわけではない。

ネクロマンサーが杖を振ると、黒色の波動が放たれてソアラを襲った。


攻撃のために接近していたソアラ、波のようなその攻撃はいくらソアラとは言え避けることはできなかった。

だが、代わりに光の盾を目の前に出現させてソアラはそれを防御する。

そして再度攻撃を加える。


ここで、一体のアンデッドが沸いてソアラを引き離そうとする。

だが、ソアラはその攻撃を最小限の動きで回避して、さらなる攻撃を加える。

僕はまだ抱擁も回帰も使えないから、『ヒール』で追撃。

そして、ここでアイテムボックスの中にあれがあったなと思いそれを取り出して投擲した。


僕が投げたそれは、くるくると回転しながら放物線を描き、あろうことかソアラの後頭部へ一直線。

「やばっ、ソアラ! 避けて!!」


とっさに声をかけたが、ソアラは後ろを見ることも無く攻撃の合間に流れるような動作でそれをキャッチし、ネクロマンサーにたたきつけた。


ォォォオオオオオ


ネクロマンサーから、怨嗟の声が上がる。

僕の投げたアイテムは、かなり効いてるみたいだ。


僕はさらに2つ、それを投擲した。

今度はちゃんとネクロマンサーに当てることができた。


オオオオオオオオオオオオオオッ!!


吐き出すように叫ぶネクロマンサー。

そういえば、あれって骸骨だけどどうやって声を上げているんだろうね。

なんていう少しくだらない疑問を抱きながら僕はそれを見ていた。

すると、ネクロマンサーの口の中から何かが逃げるように天に向かって飛んでいくのが見えた。


やがて、叫び終わったかと思うと、地面から今にも出てこようとしていたアンデッドたちはそのまま崩れ去る。

僕たちは勝利したのだ。

僕はソアラのもとへと駆けて行き、後ろから飛びついた。

しかし、鎧の角が当たっていたかったのですぐに放した。


「やった、やったねソアラ。僕たちの勝利だよ!」

「……あぁ、ところで、最後のあれはいったい?」

「あれは教会のお仕事をしてたらもらった聖水だね。少しでもダメージをと思って投げたけど、効果絶大だったね」


貰った時は5本も貰って悪いなとしか思わなかったけど、今は感謝の気持ちでいっぱいだ。


「さて、あれを回収だけして今日は帰ろうか」

「……そうだな」

一頻り勝利ムードを楽しんだ僕たちは、ネクロマンサーが倒れた場所に落ちていた杖と指輪を回収して帰ることにした。

杖は僕がもらい、指輪はソアラに上げた。


杖のほうはINTが上昇する効果だったり、闇属性魔法に補正がかかったりするという、僕には必要のない性能だったけど、魔法職なので一応もらっておくことにした。

指輪のほうは闇属性に耐性を持つようになり、闇の力場で回復すると書かれていた。

闇の力場が何かは知らないけど、杖をもらったから指輪はソアラに受け取ってもらった。


そうして廃墟での冒険を終えた僕たちは、一度街に帰ることにした。


ネクロマンサーがいた場所は広場のようになっていた。

そこから、元来た道を辿るように僕たちは歩く。

ネクロマンサーは倒したが、それでアンデッドたちがいなくなるということはなかった。


それでももはや僕たちの敵ではないので、帰りはサクサクと歩くことができた。

問題があったとするならば、ソアラのMP切れで破邪のスキルが使えなかったくらいだ。


そして、ゾンビが沸くエリアに入り、もう少しで廃墟から出ることができるというところでそいつは、突然現れた。

空から、落ちてくるように僕たちの目の前に出てきたのだ。


銀の仮面をつけた、群青色のドレスを身に纏った少し小柄な女性だった。

仮面の端から見える髪の毛は艶のある黒色で、腰くらいの長さだった。

武装らしい武装はしておらず、ドレスも相まってこの廃墟にいるのにふさわしいとは思えない格好をしていた。

それに、とても美しいと思わせるその女性だが、どこか既視感というか懐かしさを感じる。


その女性は、僕たちの前にいきなり落ちてきたかと思うとこう言った。


「ふふっ、始めまして。私は魔王、私に対抗できる光である聖女を攫いに来たわ」


自分のことを魔王と名乗ったその女性は、おもむろに僕へと手を伸ばした。

しかし、僕とその女性との間には5mは距離がある。

一体何をするつもりだ?

そう思ったのもつかの間、女性の手から骨の蛇が僕のもとへと一直線に伸びてきた。

とっさに何とかしようと思ったが、間に合わず思わず目を瞑ってしまう。


ガリッ


という音が鳴り、噛まれたと思っただけどそうではなかった。

恐る恐る目を開けると、ソアラの剣が蛇をはじいていたのだ。

だけど、同時にソアラの鎧が蛇の体から生えてきていた蛇にかみつかれていた。


それを見て僕は悟った。

この女性は、僕たちの敵なんだと。


「ソアラ!!」

「……問題ない。やるぞ」


いつもの落ち着いた声。

それに少し安心して、僕も戦闘態勢を整えようとする。

そして気づいてしまった。


「あぁ!!?」

「…どうした!?」

「あの女の人、アンデッドじゃないよ!!」


そう、目の前の女性はどう見てもアンデッドではない。

試しに回復魔法を与えてみるも、効いている様子は一切なかった。

つまりこれは―――――――


「あの人を倒せば、縛り違反だ」

「……っ! そうか。くっ、レティ、君はとてつもないものを背負わされているみたいだな。よしっ、逃げるぞ。俺が殿を務める」

「あら、逃がすと思っているの?」


ソアラが壁になって僕を逃がそうとしたが、魔王と名乗った女性はそれを許さなかった。

彼女は肩から蝙蝠のような翼を生やすと、空を飛び僕たちの後ろに回った。

ソアラもそれに対応するように動こうとしたが、いつの間にかその足が沼にとらわれていて対応が遅れた。


そしてその一瞬のスキをついて


「つかまえた♡」


女性は僕に抱き着いてそのまま空へと飛び立った。

ソアラはいくら強いと言っても、空を飛ぶ手段を持っているわけではなかった。


結果、僕は魔王に連れ去られ、ソアラは一人取り残された。




次回投稿は変わらず明日の12時です。

週間ランキングに載ることができました。

うれしいです。

皆さんありがとうございます。


感想より

Q、このゲーム特定のステータスの極振りが通用しないのでは?

A,STRとかVITの極振りならPS次第で何とかなるかもって感じですね。

 他はステータスを活かせるスキルを得る必要があるので、多少スキルポイントを別に咲く必要がありそうです。



お知らせ

この作品の前日譚的な何かである『その人形に不用意に近づくな』の電子書籍が発売が決定されました。

予約サイトは以下になります。

https://www.amazon.co.jp/dp/B08B658FRV/

詳しい話は活動報告にて記載しておりますので、そちらでご確認ください。


発売日は9月25日です。


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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
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